植物油とは、植物に含まれる脂質を抽出・精製した油のことです。
常温で液状のものを植物油と呼び、脂肪含有率の高いヤシ、大豆、菜種等の種子や果肉から精製されます。
主な用途は食用及び調理用です。
そのほか、古来には灯りとしても使われており、現在ではバイオ燃料としても注目を浴びています。
旧石器時代、夜の闇を照らすツールとして利用されていたのは、抽出が簡単な動物性油脂でした。
その後、数千年の時を経て、動物性油脂より抽出が困難な植物性油脂を入手する方法を編み出し、それを灯り用に利用するに至りました。
日本では、奈良時代には既にゴマの搾油技術が伝わっており、エゴマ税が徴収されていました。
鎌倉時代に入ると、油屋が独占権を与えられました。
当時の植物油は非常に貴重で、主に灯油(ともしあぶら)用に使うために購入され、食用として用いることができるのは限られた富裕層のみでした。
江戸時代において、菜種油の灯油(ともしあぶら)は臭いも少なく明るく大好評でしたが、菜種油1.8ℓが現代の金額に換算して約8000円もしており、江戸庶民が気軽に買える値段ではありませんでした。
「油を売る」は、何か用事があるのに、その途中で無駄話したり、全く無関係なことをして時間を潰すことを指しますが、これは江戸時代の油売りが語源です。
油売りが小さな柄杓(ひしゃく)で油をすくい、客の求める量だけ容器に注ぎ移して売るのですが、油が切れるまでに時間がかかってしまう。
求める油の量がきちんと入りきるまで、客は雑談などしながら辛抱強く待っていなければなりませんでした。
これが「油を売る」の言葉の由来と言われています。
食材データ
種類:調味料
旬の季節:年中
主な効能
エネルギー源
動脈硬化予防
切り傷、やけど
老化予防、美肌効果
栄養成分
植物油の主成分は、「健康に良い油」である不飽和脂肪酸です。
不飽和脂肪酸は悪玉コレステロール抑制、動脈硬化予防、高血圧予防、血栓症予防等に効果があるといわれています。
不飽和脂肪酸の代表格はオレイン酸、リノール酸、リノレン酸等で、このうちリノール酸、リノレン酸は人体では合成できず、食物から摂らなければならない「必須脂肪酸」です。
植物油には「ゴマ油」、「紅花油」、「オリーブオイル」、「コーンオイル」、「大豆油」、「菜種油」、「パーム油」、「ヒマワリ油」等のたくさんの種類があります。
ゴマ油は焙煎し、香ばしい風味を引き出した後に油を搾ります。
酸化防止効果がある天然成分を含んでおり、ゴマに含まれるセサミンが健康効果として注目されています。
リノール酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸をおよそ50%含み、コレステロール値を下げ、肝機能を高め、肌や髪の健康維持に働きかけます。
江戸時代の漢方医・華岡青洲が考案した切り傷や火傷を治す軟膏「紫雲膏」にゴマ油が配合されています。
紅花油は紅花の種からとった油のこと。
高品質で健康に良い食用油とされ、「オレイン酸が多い種類」と「リノール酸が多い種類」があります。
体内の血流を整える効果があると言われます。
オリーブオイルは、オリーブの実から取れる油です。
料理を始め、化粧品、サプリメント、石鹸等、その用途は多岐に亘ります。
オリーブオイルに豊富に含まれているオレイン酸が悪玉コレステロールを減らし、胃酸の分泌を促進、腸の調子を整えてくれます。
オリーブオイルを摂ることにより、動脈硬化や心疾患予防が期待できます。
また、植物スクワランやビタミンEも含んでおり、化粧品として使えば美肌効果も期待できます。
コーンオイルは、トウモロコシの胚芽から抽出した油です。
香ばしい風味が特徴で、揚げ物料理に適しています。
若返りのビタミンとも呼ばれるビタミンEを豊富に含み、血管や細胞等の老化防止に働きかけます。
大豆油は、日本の食用油の中で大変ポピュラーな存在です。
サラダ油、マヨネーズ、マーガリンの原料として使われています。
菜種油は、菜の花の種子から抽出します。
ドレッシング、炒め物、揚げ物まで幅広く使用でき、マーガリンの材料としても用いられます。
また、使い古した菜種油をバスの燃料(バイオディーゼルと言う)にするリサイクル方法も進められています。
パーム油は、アブラヤシの果実から得られます。
独特の香りと味があり、インスタント食品、スナック菓子、洗剤等に使われています。
ヒマワリ油は、ヒマワリの種子から得られる油です。
含有脂肪酸のおよそ70%がリノール酸といわれています。
リノール酸は血中コレステロールを下げ、生活慣病予防、アトピー性皮膚炎改善等に役立つと言われています。
特徴
油の保存には、十分に注意を払いましょう。
- 光は油を傷める原因になるため、保存場所は、暗くて涼しい場所が適しています。
- 高熱、高温、湿度の高い場所に置いておくのはやめましょう。
- ガスコンロ周辺、炎天下の車中に長時間放置するのは禁物です。
- 空気に触れることも油を傷める原因になります。
- 使用後は栓をきっちりと閉めましょう。
- 開封後は1ヶ月から2ヶ月以内に使い切りましょう。
- 賞味期限にも気をつけましょう。
- 油の使用回数はおよそ3~4回が目安です。
- 「油が疲れてきた」ら廃棄し、新しい油を使いましょう。
加熱時に不快な油臭い臭いがあれば、油が疲れた証拠です。
また、「色が濃くなる」、「揚げ物途中に消えにくい泡が出る」、「粘りが出る」、「180℃程度で煙が出る」等も油が疲れた証拠です。
調理中は、油のそばを決して離れないようにしてください。
種類
インドネシア、マレーシア、中国、アメリカ、アルゼンチン、ブラジル、インド等で生産されています。
日本は原料のほとんどを輸入に頼り、工場内で精製されます。
「ゴマ油」、「紅花油」、「オリーブオイル」、「コーンオイル」、「大豆油」、「菜種油」、「パーム油」、「ヒマワリ油」等の種類があります。
レシピ
オイルおにぎり
少し堅めの温かいご飯160g(茶碗1膳分)にオイル小さじ1を混ぜ、おにぎりを作る。
オリーブオイルやごま油を使えば、素材の味が活かされ、風味が増して美味しくなる。
油の効能で腹持ちも良く、冷めてもおにぎりが堅くならない。
オイルしゃぶしゃぶ
牛脂を使う代わりにオリーブオイルで牛肉、タマネギ、トマト等の具材を焼いた後、割り下で味付けしたしゃぶしゃぶ。
醤油の風味とオリーブオイルの旨味がマッチして、美味しくなる。
アヒージョ
オリーブオイルと刻んだニンニクで具材(トマト等の野菜、海老、牡蠣、イワシ)を煮込む小皿料理。
そのまま食べるほか、バゲットやチュロスを小皿に溜まったオリーブオイルに浸して食べると無駄がない。
植物油 主成分は動脈硬化等を防ぐ「健康に良い油」の不飽和脂肪酸 まとめ
植物油の主成分は「健康に良い油」である不飽和脂肪酸がほとんどを占めています。
不飽和脂肪酸にはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸等があり、悪玉コレステロール抑制、動脈硬化予防、高血圧予防、血栓症予防等に効果的に働きかけます。