入梅や梅雨は、梅の実が黄色く色づく頃ということで「梅」の字があてられ、名付けられました。
梅雨入りになると、赤じそがスーパーに出回ります。
しその葉は、「紫蘇」と書くことから本来は紫色、つまり赤紫蘇のことを指します。
ドレッシングや刺し身のツマでお馴染みの「青じそ」は、改良して作られた赤紫蘇の変種です。
この赤紫蘇は梅雨の時期だけのもので、梅干しなどに用いられますが、梅と紫蘇のタイミングはバッチリなんですね。
梅雨が梅の季節と言われるのもこのためでしょうか。
さて、暦では6月11日頃、入梅(にゅうばい)とされています。
入梅とは、いわゆる梅雨入りのことですが、どうして「入梅(にゅうばい)」「梅雨(つゆ または ばいう)」のように漢字や読み方が違うのでしょうか。
よく考えてみれば、入梅は毎年6月11日頃というふうにほぼ決まった日を指しますが、梅雨入りに関してはそうではありません。
よく、天気予報で「今年の梅雨入りは6月7日頃です」というように解説されていますが、毎年決まった日では無いようです。
今回は、入梅と梅雨入りの違いについて考えてみましょう。
入梅とは
入梅は本来、梅雨入りの漢語表現なので、同じものとも言えます。
しかし、入梅は立春から135日目とされていて、毎年6月11日と決まっていました。
何故かと言うと、江戸時代には現在のような天気予報はありませんでしたが、農業をする農民にとっては田植えの時期を決めるにも雨季の時期、つまり梅雨入りを知ることは重要なことでした。
この梅雨入りをわかりやすく、目安として暦にあてたのが、入梅です。
また、芒種といって「種をまく時期」という節気があります。
昔は、陰陽五行で占っていましたから、芒種(種をまく時期)以降の水の気が強い「壬(みずのえ)」の日を「入梅」としたといいます。
現在では、太陽の黄経が80度に達した日を入梅としており、6月11日頃となりました。
入梅は、古い時代の暦の上の目安だったのです。
梅雨入りとは
梅雨は、みなさんご存知の通り「雨季の一種」です。
日本、中国、韓国、東アジアの国々では、梅雨前線が日本の南岸に停滞することで雨季が発生します。
梅雨入りは、その東アジアの雨季、すなわち梅雨に入ることを指します。
古くは、「入梅」という暦の上での目安を梅雨入りとしていましたが、現在では気象情報が発達し、人工衛生にて雨雲や前線の動きを見れるようになったため、気象庁が発表する「梅雨入り宣言」をもって梅雨入りとしています。
そのため、梅雨入りの時期は、その年によってマチマチということになります。
日本の平均としては6月8日頃ですが、日本の南西方面から梅雨にさしかかるため、沖縄では平均5月9日、九州四国では平均6月5日と早い地域もあります。
ちなみに北海道では梅雨はありません。
「梅雨(つゆ)」の読みはというと、梅雨という言葉が中国から入ってきた時には、漢字ですので「ばいう」と読んでいました。
江戸時代の『日本歳時記(1687年)』によると、雨季のことを指して「これを梅雨(つゆ)となづく」と記されています。
このように、「梅雨(つゆ)」という読み方は江戸時代から使われ始めたと考えられています。
梅雨入りは、実際の雨季の始まりを指す言葉だったのです。
梅雨以前の読み方
『日本歳時記』で「つゆ」と名付けられる前は、なんと呼んでいたのでしょう。
それは、古い俳句に見ることができます。
平安時代に書かれた『源氏物語』や後の俳諧師・松尾芭蕉の俳句にも「五月雨(さみだれ)」と記されています。
「五月雨(さみだれ)」→「梅雨(ばいう)」→「梅雨(つゆ)」→「入梅(にゅうばい)」と変化してきた呼び名ですが、近年の気象情報の発達により気象庁が提唱した言葉「梅雨入り宣言」により、「梅雨(つゆ)」という言葉が再び使われ始めたことにより、「入梅」と「梅雨」が混同されてしまったということです。