減塩は身体に良い!そんな風潮がありますね。
昔の刑罰の一つに、「塩抜きの刑」といったものがありましたが、逆に健康的になりそうな刑罰です。
しかし、ヘルシーなイメージとは裏腹に、かなり過酷であったと言われています。
塩抜きの刑と、減塩治療についてチェックしてみましょう。
塩抜きの刑の実態
江戸時代や戦後のシベリア抑留地で、実際に取り入れられていた刑罰の一つが「塩抜きの刑」です。
その方法は、塩なしの食事を与え続けるだけという単純なものです。
食事に塩がないと、ただでさえ不味そうな抑留地での食事が、さらに不味くなりそうですね。
不味いもの食べさせて、やる気を挫くことが狙いかと思いましたが、それ以上の恐ろしい効果をもたらしたと言われています。
疲れやすくなり、気力がなくなってしまうだけでなく、生命の維持が難しくなるレベルで倒れてしまうのです。
塩を抜き続けることで、死刑と同等の効果をもたらしたとされています。
現代では、健康のためにと減塩生活が推奨されていますが、一歩間違えると「塩抜きの刑」と同じような結果をもたらしてしまうと考えられています。
減塩治療とは、果たして本当に身体のためになっているのでしょうか。
減塩治療法が推奨される原因は
高血圧の治療においては、食塩の制限が重要だとされています。
専門的な理由については、以下の引用をご参照ください。
米国の医学者L.K.ダールが1950年代に日本を訪問し、鹿児島から青森までの1人当たりの食塩摂取量と高血圧や脳卒中(出血)の関係を調べた。その結果、当時1人1日平均約14グラムの塩分を摂取していた鹿児島の人たちに比べ、約28グラムを摂取していた秋田や青森の人たちの高血圧や脳卒中の罹患率が格段に高く、塩分=「高血圧・脳卒中の原因」という図式が確立された。これを受け青森・秋田から減塩運動が始まり、全国に広がっていき、今では「1日の塩分摂取量は10グラム未満が望ましい」とされている。
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以上のことから、減塩療法法が望ましいとされるようになりましたが、実は大きな矛盾が存在していると考えられています。
こちらの研究では、鹿児島と秋田・青森の塩分摂取量と健康の関係について触れていますが、居住環境が異なることが考慮されていません。
真冬には豪雪地帯となる秋田・青森は、生きていくだけでも大変過酷な環境です。
ましてや、1950年代ともなれば、現代では機械が代行している作業を、肉体労働で行うしかありませんでした。
極寒の環境の中、血圧を上げて、血流を維持していなければ働くことは不可能だったのです。
そのため、塩分が豊富な漬物で、ご飯を食べる必要があったのだと考えられています。
つまり、秋田・青森で生活する人と、温暖な鹿児島の人とで比較したのでは、正しい原因を探ることができないのです。
塩分と高血圧の関係を明らかにするには、同じ居住環境の者と比較していく必要があります。
塩抜きがもたらした実験結果
恐ろしい刑罰の一つとして実施されていた「塩抜きの刑」ですが、医学的に実験してみると、どのような結果を招くのでしょうか。
1930年代のアメリカで行われた実験では、塩抜き3日目から、食欲不振や冷や汗をかくなどの異常が、被験者に見られ始めたと記録されています。
5日目をすぎると、どうにもならない倦怠感を訴えるようになり、8日目になると筋肉の痙攣が止まらなくなってしまったといいます。
あまりにも危険な状態に陥ってしまったため、実験は取りやめざるを得なくなってしまいました。
塩には、物を食べるときに塩味を与えるだけでなく、殺菌効果を発揮したり、肉を引き締めて、旨味をだしたりする効果があります。
また、食事に関することだけでなく、人間の身体に次のような恩恵をもたらします。
- 体液の浸透圧を一定に保つ・PH値を保つ
- 神経に影響して興奮を伝達する
- 筋肉の収縮作用を促すために必要となる
- 消化液の原料として必要となる
- 体内で有毒物資を解毒する働きを持つ
減塩によって、体内の塩分が不足すると、以上のような恩恵を得られなくなってしまいます。
その結果、アメリカでの実験では、命にかかわるような症状が出ることになってしまったのです。
実験で見られた症状は、「低ナトリウム血症」と呼ばれるものです。
人の身体は、汗をかくだけでも塩分を排出します。
また、必ず排泄される尿も同様です。
塩分の摂取量が下がると、身体から一方的にナトリウムが排出されるだけの状態となる可能性が高くなります。
また、高血圧の治療では、利尿剤が処方されますが、ナトリウムの排出をさらに促すことになります。
体内の水分も減ってしまうため、「低ナトリウム血症」のリスクが高くなってしまうのです。
高血圧の治療と塩分の関係は、非常にデリケートな問題となります。
塩抜きの刑 まとめ
減塩が推奨される現代ですが、塩抜きのような極端な方法では、生気も抜けてしまいます。
世界保健機関(WHO)が推奨している、理想的な1日の塩分摂取量は5gです。
減塩といっても過敏にならず、適度な塩分を意識して、健康を維持していきましょう。
“塩抜きの刑|死に至る過酷な刑罰と減塩治療の矛盾” への1件のフィードバック