岩手県、遠野のむかしばなし「貧乏神と福の神」というお話しに「白湯」が出てきます。
それは、こんなお話しです。
二人の神様が今夜の宿を探していました。
先に宿を得た貧乏神と別れた福の神は、なかなか宿を見つけることができませんでした。
暗くなり、寒くもなってきて、福の神が疲労困憊して歩いていますと、暗がりから楽しげな笑い声が聞こえてきました。
そちらに行くと、筵(むしろ)が掛かっただけの粗末な家があり、中に入ると若い夫婦が談笑しながら火にあたっていました。
見るからに貧乏そうな夫婦に、福の神が「今晩泊めて欲しい」と言うと、とても暖かく招き入れられました。
夫は、たくさんの薪で火を焚いて家を暖め、「白湯を注いで」福の神をもてなしたのです。
冷え切った体が温まり、とても気分が良くなったので、福の神はそのままその家に泊まりました。
それからというもの、貧乏だった夫婦は裕福になったそうです。
このように、お話しの中で、白湯は要的な存在として描写されています。
体が弱っているときや、病中・病後には白湯を飲むのが良いとされます。
また、薬を飲むときは白湯で飲むのが最も良いと言われています。
胃の温度が下がらず、薬の分解や吸収が円滑に行われるからです。
さて、私達の体にとって、毎日必要量の水分を摂ることは非常に重要です。
水分不足は怖いものです。
水分が足りないと、老廃物が体内に溜まります。
腎臓に負担がかかり、様々な悪影響を体に及ぼします。
血がどろどろになることで、血栓予備軍にもなり得ます。
ですが、「飲みやすいから」と冷水をがぶがぶ飲んでいませんか?
冷水は水の分子が鎖のようにつながっており、粒子が大きいため、そのままでは細胞膜を通過できません。
細胞内に入らないので効率的な水分代謝ができず、過剰な汗や頻尿となって、体の外へ出ていきます。
冷水をがぶがぶ飲むと、すぐにトイレに行きたくなりませんか?
適切な代謝ができずに余剰水分と認識されてしまい、時を経ずに尿として排泄されてしまうのですね。
夜に冷水を飲んで熟睡してしまい、それが朝まで体内に溜まったままだと、東洋医学でいうところの「水毒」の症状に繋がります。
過剰な鼻水や手足のむくみ、下痢なども水毒の症状の一つです。
それに比べ、温かい水(白湯)は、水の分子がバラバラで粒子が細かいので、細胞膜を通過します。
細胞内に入り、新たな組織の一部になると同時に、老廃物を体内の古い水と一緒に押し出すので、常に細胞が若い状態で維持できるといわれています。
日本では昔から何気なく飲まれてきた白湯ですが、最近はインドの伝統医学・アーユルヴェーダの考えに基づいた「白湯デトックス(解毒・毒出し効果)」や「白湯ダイエット」がブームとなっています。
飲むだけで健康になれる、痩せられる、と聞くと、ちょっと疑わしく思ってしまいますが、実際にこの白湯ダイエットで綺麗に痩せた芸能人の方もいます。
「白湯を飲むようになって体調が良くなった」という話を聞くと、チャレンジしてみたくなりますね。
そこで、白湯の効能や効果的な作り方、飲み方や飲用時間帯などについて調べてみました。
白湯って何?
白湯は「さゆ」と読み、お水を沸かしただけのお湯のことです。
白という字が入っていますが、実際には無色透明です。
白という字には、「純粋な」とか「何もない」という意味があるのです。
水道水には殺菌成分の塩素(カルキ)が含まれており、これが独特のカルキ臭を生じさせますが、沸騰させることでカルキ臭がとび、味が美味しくまろやかになるといいます。
白湯の健康・美容効果
白湯を飲むことで得られる健康・美容効果は主に次の4つと言われています。
基礎代謝力上昇効果
白湯は温かい飲み物です。
温かい飲み物を口から摂ることで、食道や胃腸が温められます。
それにより血液の流れも良くなりますので基礎代謝も上昇すると言われています。
解毒効果
胃腸などの内臓が内側から温められ、その働きが活発になるので、自然に腸の蠕動運動が促進されます。
便秘が解消され、体内の老廃物が出て行くので解毒効果が期待できます。
内臓機能回復効果
冷えは、内臓機能の働きを低下させます。
冷えで、腎臓のろ過装置機能もうまく働かなくなるのです。
真夏に冷たい物ばかりを飲んでいると、胃腸の調子が悪くなるのはこのせいです。
温かい飲み物を摂ることで内臓機能が回復し、消化不良や胃もたれなどが起きるのを防いでくれます。
冷え症改善効果
血流が上昇することで冷え症が改善されます。
単純に、手袋や靴下を重ねて履いても手足が冷えたままなのは、根本的に体の内側から冷えが来ているせいです。
白湯を飲むことで体の内側から温めてください。
白湯は、どんな症状の人が飲めば良いのでしょうか?
特に冷え症や便秘の方には白湯がお勧めだと言われています。
冷え症と便秘の症状は表裏一体で、冷え症と同時に便秘にも悩んでいる方が多いそうです。
便秘解消法の参考例としては、冷水を多く飲むことが挙げられますが、冷水を大量に飲めば体が冷えてしまいます。
体が冷えれば内蔵も冷え、その機能が低下します。
排便を促す腸の蠕動運動が鈍くなり、更なる便秘を引き起こすという悪循環につながっていきます。
解消するには、温かい飲み物である白湯を飲むことが効果的です。
白湯の作り方
白湯の作り方は簡単です。
やかんに水を入れ、10分ほど沸騰させた後、50~60℃になるまで冷めるのを待っているだけです。
ですが、この10分間の沸騰というのはアーユルヴェーダからきています。
日本に比べ、衛生状態が悪いインドの水には必要ですが、日本の厳重に管理された水道水においては10分間も煮立たせるのは不要です。
衛生上の観点からでは、日本の水道水で白湯を作る場合は1~2分程度の沸騰で構わないです。
マグカップに水を入れ、レンジで1分半チンして出来上がり、でも良いでしょう。
ただ、原水の消毒過程において生じるトリハロメタンという有害物質が、水道水には微量に含まれています。
トリハロメタンは、短時間沸騰では数倍に増えるといわれており、除去するためには10分~20分沸騰させ続ける必要があります。
ですが、短時間沸騰で増えるトリハロメタンは、実際はごく僅かの生成値でしかありません。
健康上、全く影響のない数値とされていますので、健康的な成人であれば、あまり神経質に考える必要はないでしょう。
どうしても心配な方は長時間沸騰して、白湯を作ってください。
また、トリハロメタンは発がん性物質ではないかとの疑いも持たれていますが、近年の研究によれば、緑茶に含まれるカフェインで膀胱がんリスクが高くなるという可能性が指摘されました。
しかし、この研究結果は一日5杯以上の緑茶を摂取していた女性の症例数に限られますので偶然に得られたデータとも考えられます。
白湯にしろ緑茶にしろ、過剰摂取せず、ほどほどの飲用に留めておけば大丈夫、ということですよね。
白湯の飲み方、飲用量や時間帯について
白湯はたくさん飲めばいいというわけではありません。
むしろ、一日1ℓも2ℓの飲用は、体に必要な成分や栄養素まで流してしまうため、700~800ml程度に抑えるのがポイントと言われています。
さらに、白湯を飲むのに最も適しているのが、朝起きて直ぐです。
朝起きて直ぐ飲めば、胃や腸が空の状態のため吸収されやすく、効果がでやすいとされています。
コップ一杯を5~10分ほどかけてゆっくりと飲むのがよく、イメージとしてはゴクゴクと飲むよりも啜って飲みます。
また、朝昼晩の食事時に白湯を一緒に摂るのもよいでしょう。
口中や喉を潤すことで誤嚥を防ぐだけでなく、白湯を飲むことで満腹感を得られやすくなりますので、食事量を減らすことができます。
白湯をアレンジして美味しく飲む方法と作り方
白湯は、お水を沸かしただけなので無味無臭です。
味がしない、美味しくないという理由で長く続けられない方もいます。
そんな時は、アレンジした白湯を飲んで気分を変えてみてはいかがでしょうか。
アレンジ白湯として人気があるのが、しょうがとレモンです。
沸騰した水を冷ましている時、皮つきのままスライスしたしょうがを、やかんやポットの中に入れておくだけです。
白湯に、半分にカットしたレモンを絞った絞り汁を入れて混ぜても良いですね。
しょうがには体を温める効果がありますし、レモンは疲労回復や肌の調子を整えるビタミンCが豊富に含まれているのでお勧めです。
白湯のまとめ
白湯を初めて飲むとき、「体内に毒素が多ければ多いほどマズい」そうです。
むしろ最初から美味しいと感じるのは稀で、多くの方がこの最初の「マズさ」に出鼻をくじかれ、白湯を飲むことをやめてしまいます。
根気よく1~2週間飲み続けることで白湯のおいしさを実感したという方もいます。
「体のため」と自分に言い聞かせて飲むのも良し。
自己管理という意味での励みとなりますから。
「鉄瓶で沸かした白湯は、味がまろやかになり、驚くほど美味しい」という話も聞きますから、白湯作り専用に鉄瓶を購入しても良いでしょう。
いずれにしろ、ご自分にあったやり方で無理なく「白湯」にチャレンジしてみましょう。
そのうち、どんな飲み物よりも白湯が美味しく感じられる日が来るかもしれません。