カキとは、カキノキ科カキノキ属に属する果物のことです。
猿蟹合戦でもお馴染みの果物ですね。
ぶつけられた衝撃でカニが死んでしまうほど、未成熟なカキの実は青くて硬いですが、良く熟した真っ赤なカキは、まるでお菓子のように甘く美味しくなめらかな口どけで、「柿が色づくと医者が青くなる」と言われるほど栄養価が高いとされます。
明治28年10月26日における奈良旅行で、正岡子規が「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」の句を詠んだことに因んで(諸説あり。病床で詠んだという説もある)、全国果樹研究連合会のカキ部会が10月26日を「柿の日」に制定したほど、日本の風土に強く根付いてきた親しみのある秋の果実として、カキは人々から愛されています。
今では当然の如く、「カキには甘柿と渋柿の区別がある」という認識がありますが、実際のところ、鎌倉時代までは「カキ」と言えば、渋柿のことのみを指していたのはご存じでしょうか?
日本におけるカキの歴史は古く、縄文時代には定着していたとされ、「古事記」や「日本書紀」にも記述が見られます。
平安時代中期に編纂された施行細則の「延喜式」にも、「干し柿献上」という記述があるそうです。
そうです。
当時、流通していたのは渋柿であり、干し柿にすることで甘く食べ易くして、冬季の糖分補給等の用途に充てていました。
「甘柿」は、鎌倉時代に渋柿の突然変異種として登場しました。
更に、甘柿には受粉に関係なく渋抜きされる「完全甘柿」と、受粉して種子ができてから渋抜きされる「不完全甘柿」があります。
もし自然界に突然変異種の「甘柿」が現れなければ、皮を剥いた直後の「生柿」を私たちが味わうことは不可能だったのです。
なぜなら、渋柿に含まれる水溶性の高い「カキタンニン」が、私たちの舌を強烈に収れんさせ、強い渋みとして感じさせるからです。
食材データ
種類:果物類
旬の季節:秋
主な効能
高血圧予防
二日酔いの改善
滋養強壮(干し柿)
栄養成分
昔から、カキを食べると二日酔いに効くと言われています。
理由の一つに、豊富に含まれているカリウムの利尿作用が挙げられます。
更に、柿に含まれている渋みのもとの「シブオール」というタンニン成分と「アルコールデヒドロゲナーゼ」と呼ばれる酵素が、アルコール分解に働きかけて二日酔いを予防します。
カキに含まれている「タンニン」は、口に含むと、痛みをもたらすほど強い渋味を感じさせます。
タンニンの水溶性が高く、唾液に溶けることで強い渋み(「収れん作用」とも呼ぶ)を感じるのです。
舌に渋みを感じさせないためには、水溶性の高いタンニンを「不溶化すること」が必須条件です。
勿論、不溶化しても、カキに含まれるタンニンの量が変わるわけではありませんが、味蕾が渋みを感じなくなるのです。
つまり、カキが渋いか渋くないかを決めるのは、可溶性タンニンをカキが含んでいるかどうかなのです。
では、可溶性タンニンを一体どうやって不溶化するのでしょう?
「可溶性タンニンはアセトアルデヒドと結合することによって不溶化」されます。
渋柿を甘くする方法には、「湯に浸ける」、「干し柿にする」、「アルコールやドライアイスで渋みを取る」などが挙げられますが、いずれも、加工途中で生成されてくる「アセトアルデヒド」と、カキに含まれる「可溶性タンニン」を結合させて不溶化(タンニンの可溶性が0.1%以下になった)させるため、渋みを感じなくなるのです。
果肉にはタンニンの他、糖分、ペクチン、ビタミンAやビタミンCなどが含まれています。
特にビタミンCは豊富に含まれており、カキ100gならおよそ70mg含有しています。
ビタミンCの1日必要量を50mgと考えれば、大きめのカキ1個200g程度であれば、半個食べれば十分補えます。
ビタミンCには抗酸化作用があり、免疫力を高めてくれます。
また、美肌効果も期待できます。
風邪症状のある時や、喫煙者はビタミンCが特に必要です。
1日1個食べることを心がけると良いでしょう。
前述のタンニンには、血中の悪玉コレステロールを減らして血液を綺麗にする作用があります。
悪玉コレステロールが減少することで、高血圧や脳卒中の予防・改善などにも期待ができます。
生のカキは「冷やす作用」が強いとされます。
二日酔いの時に完熟した甘柿を一つ食べると気分が良くなると言われますし、「冷え込む夜、空腹のあまり、カキ売りが売れ残ったカキを全て食べて野宿したために死んでしまった」という昔話があるほどです。
リウマチや神経痛などの冷えからくる症状の方は避けた方が無難かもしれません。
「干し柿」にすると、水分量が減るため、最も多い栄養成分は炭水化物となります。
生柿に比べてビタミンCは減少しますが、カロテンは2倍に増え、食物繊維も豊富になり、ミネラル分も多い高カロリー食品となります。
ダイエット中の方は、食べ過ぎに気をつけましょう。
漢方においては「体力を補い、胃腸を丈夫にする。咳を緩和し、去痰を促す」等の効能があるとされます。
更に、熟したカキのヘタを乾燥させた「柿蒂(シテイ)」は、しゃっくりを止める、夜尿症に効果があると言われています。
特徴
「柿は二日酔いに効く」というのは良く聞かれる言葉。
アルコールの分解代謝過程で生じる「アセトアルデヒド」が頭痛や吐き気などの二日酔い症状を引き起こします。
東洋人は「アセトアルデヒド」の分解酵素が不十分なので、悪酔いや二日酔いをするといわれています。
カキに含まれるカキタンニンが、アルコールやアセトアルデヒドと結合し、速やかな体外排出を促してくれます。
タンニンが鉄分と結合すると「タンニン鉄」となります。
水に溶けにくく、腸からの鉄の吸収率を妨げます。
貧血気味の方は、食事前後30分のタンニン含有食品は控えた方が良いとされます。
渋抜きの方法としては、「40~42℃の湯に12~24時間浸けておく」、「30~40%のアルコールを振りかける」などがあります。
また、「小さな穴を数か所開けたビニール袋に、渋ガキ5個&リンゴ1個を入れて口を閉じて置いておく」と、リンゴから出るエチレンの働きで、およそ1週間で渋が抜けます。
ほぼ全ての「種無しカキ」は渋柿です。
やはり、収穫したままでは渋くて食べられた代物ではないので、「渋抜き」してから出荷しています。
購入後の種無しカキを風通しの良い場所に数日間置いておけば、残っている渋も抜け、とろりと甘くなるそうです。
カキ渋には消臭効果や殺菌効果がありますので、「柿の葉寿司」などに柿の葉を利用しています。
また、木材や布の天然塗料、消臭予防の石鹸にも用いられます。
種類
中国、韓国、ブラジルなどで生産されています。
国内の甘柿では、和歌山県、福岡県、奈良県、岐阜県、愛知県など。
渋柿では、東北地方から九州まで、と全国で生産されています。
カキの大きな分類は「甘柿」と「渋柿」に分かれます。
品種は1000にも達しており、「富有(ふゆう)」、「平核無(ひらたねなし)」、「甲州百目(こうしゅうひゃくめ)」などが代表的な品種です。
レシピ
干し柿
渋柿を干し柿(吊るし柿とも言う)にすると、水溶性のタンニンが不溶性になって甘くなる。
カビを防ぐため、干す前に熱湯殺菌する方法も。
生の柿とは全く違う食感で、柔らかな歯応えとねっとりした噛みごたえが苦手な人も。
そのまま食べるほか、パン、お菓子、天麩羅、なますなどにも用いられる。
柿ジャム
柿を使って作るジャム。
通販で購入可能なほか、渋抜きしたカキを加熱して自分で作る方法も。
一度渋抜きしたカキを使った場合、渋戻り(再び渋くなること)することがあるので注意が必要。
パンに付けるほか、ヨーグルトにかけても美味。
カキ【柿】 タンニンが二日酔いに効く。渋柿を干せば甘くなる まとめ
正岡子規の句に因んで「柿の日」が制定されるほど、私たちの風土に根付いている秋の味覚、カキ。
甘いカキは突然変異種によってもたらされました。
カキに含まれるカキタンニンが、二日酔いを予防してくれます。
ビタミンCが豊富に含まれており、その抗酸化作用により、免疫機能を向上させます。
風邪を引きやすい方や、お酒が好きな方にお勧めの果物です。
タンニンを含む食べ物を薬用として用いる場合も多く、カキに含まれる食物繊維と共に、整腸作用や生活習慣病の予防も期待できます。
但し、生のカキは体を冷やしやすいので、冷え性の方は食べ過ぎに注意しましょう。