ノビチョクの作り方は毛染め剤を調合するように簡単にできます。
ノビチョクとは1970~80年代にロシアで開発された神経ガスの一種ですが、その取り扱いが実に安全かつ簡単であるといわれています。
今年3月頃にイギリスに住むロシア人のセルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリアさん親子が意識を失っているところを発見され、分析の結果ノビチョクという神経ガスによるものだと明らかになりました。
また、6月30日にはドーン・スタージェスさんが同様に意識不明で発見され、7月8日に死亡しています。
こんな恐ろしい神経ガスの取り扱いが安全で簡単に作れるというのですが、本当なのでしょうか。
ノビチョクの取り扱いを容易にした理由
ノビチョクとはロシア語で「新人」あるいは「新米」という意味をもちますが、取り扱いが容易であるということから名付けられたのでしょうか。
まず、ノビチョク開発に関して北大西洋条約機構(NATO)との軍事衝突を想定した4つの目的がありました。
- ひとつ目はNATOの標準的な化学物質検出装置で検出されないこと。
- 二つ目は化学兵器禁止条約の規制リストを回避できる物質であること。
- 三つ目は安全に取り扱えること。
- 四つ目はNATOの化学防護服などの装備を突破すること。
この4つの目的を全て達成したとされるノビチョクは、取り扱いの容易さを目指したともいえるでしょう。
まず、ひとつ目、二つ目は、危険を冒さずにノビチョクを目的地に持ち込めるという利点があります。
三つ目は特別な知識を必要とせず、最低限の毒物取り扱い知識のみで実行できるという利点。
そして、四つ目は効果が大きく致死性が高いという利点です。
ノビチョクの作り方
ノビチョクは前駆物質と呼ばれる化学物質を混ぜ合わせて完成させます。
毛染め剤のように1剤と2剤を混ぜ合わせると完成すると考えるといかに容易であるかがわかります。
また、前駆物質にすることで化学兵器禁止条約の規制にも当てはまらず、化学物質検出装置を突破できるのも暗殺などに用いるには大きな利点です。
そして最大の利点は、完成後のノビチョクの危険性に比べて前駆物質自体の危険性が低いことです。
しかし、間違った調合により適切ではない薬剤を作り上げてしまうという欠点もあるようです。
ノビチョクの殺傷効果
2017年に北朝鮮の金正男氏がマレーシア滞在時にVXガスで殺害されたのを覚えている方も多いでしょう。
VXガスはものの数分で死に至るなど、日本のメディアでは当時、サリンを超えた最強の化学兵器であると報道されていました。
しかし、このノビチョクの致死性はVXガスの5~8倍といわれており、神経剤としては最も毒性が高いとされています。
人の肌に付着しただけで最短30秒で効果が表れるというとんでもない致死性をもっています。
また、現在ではこれに対応する治療薬は無いといわれています。
ノビチョクによる中毒症状
ノビチョクは神経が正常に機能しなくなるという神経済の一種です。
ノビチョクを吸引してしまうとすぐさま筋肉の不随意収縮が始まり、心臓、横隔膜が正常に機能せず、呼吸ができなくなります。
そして、最終的には心不全、あるいは肺水腫による窒息死となります。
永久的な障害
ノビチョクは神経損傷を引き起こすことから永久的な障害をもたらす可能性があるといわれています。
死に至らずとも意識不明のまま、あるいは意識が回復したとしても歩行能力を失い、身体に障害を残します。
また、身体は衰弱しきっている状態で、毒性肝炎、重度のうつ症状が発症し、回復することはなく、後にはやはり死に至るといいます。
ノビチョクの作り方は簡単!その効果と死に至る症状とは まとめ
こんな危険な化学物質が存在することは理解できますが、私たちの住む日本に持ち込まれることのないよう願うばかりです。
地下鉄サリン事件では多数の被害者がでたことで「サリン」という毒物の名を知ることになりました。
そして金正男暗殺事件ではVXガスが一般の私たちにも知られることになりました。
ノビチョクという言葉が身近なものになってはいけないのです。