ナットウとは大豆に納豆菌をかけて発酵させた日本特有の伝統的食材です。
一般的には「糸引きナットウ」のことを指しています。
ナットウは好き嫌いがハッキリ分かれる食べ物で、「ナットウなんか見たくもない」と言う人は、あの独特の匂い(発酵臭)や粘り気が苦手なのでしょう。
「世界の臭い食べ物」にもしばしば選ばれているナットウは、あの独特の匂いとねばねば感で海外の方からは「非常に食べにくい」と敬遠されがちです。
「日本通」としての条件に、「刺身を食べられること」と並んで「ナットウを食べられること」が挙げられるほどです。
確かに昔のナットウは随分と匂いがきつかった気がしますが、最近のものは匂いを抑えてある商品も多いです。
それでも微かに漂ってくる匂いに敏感な方は、「酢の物にする」、「キムチを混ぜる」、「揚げ物にする」などの方法でナットウの匂いを緩和させ、食べやすくすることができます。
ナットウは中国から伝わってきたわけではなく、日本起源の食べ物と言われています。
弥生時代、煮豆と藁の菌が意図せずに作用し、全くの偶然の産物として「糸引きナットウ」が出来たのではないかと考えられていますが、はっきりとは解明されていません。
ほかにも、「聖徳太子が馬の飼料の残った煮豆を藁で包んでおいたらナットウが出来た」などの説があります。
江戸時代までは自然発酵法で製造されていました。
江戸庶民は毎朝呼ばわる「納豆売り」の声を聞き、味噌汁に納豆を叩き刻んで入れた「納豆汁」を朝食に食べることで、一日の始まりを実感していたことでしょう。
その後、戦時中には軍用食として重宝され、終戦後は栄養食として食べられていましたが、常食として人々に受け入れるのには、随分と地域差がありました。
流通量が大幅に増え、ナットウが全国的に普及するようになったのは平成の時代になってからです。
現在、日本国内で流通しているナットウは食品基準法に基づき、管理されて製造されており、全国の食品売り場で手軽に購入できます。
「納豆食うひと、色白美人」、「納豆時に医者要らず」、「夏負けしたら納豆を食え」、「納豆めしに食あたりなし」などのことわざがあるように、ナットウは良質な栄養源であると共に、整腸効果や美肌効果にも役立つ優れた食材と言えましょう。
食材データ
種類:加工食品
旬の季節:年中
主な効能
殺菌、抗菌作用
血栓の融解、発ガン物質の抑制
下痢の改善
肝機能向上
栄養成分
「納豆は100回掻き混ぜてから食べろ」とよく言います。
ナットウを始め、オクラや山芋などのネバネバした食材が健康に良いことはご存知の通りです。
ナットウをよく掻き混ぜることでネバネバ感が増し(糸をよく引く)、更にアミノ酸やグルタミン酸が浮き出ることで旨味が増します。
発酵食品であるナットウは良質な栄養源であり、食べやすく柔らかいので消化に負担がかかりません。
高齢者の方やお子様、胃腸の調子の悪い方などに適した食材です。
主な栄養成分はダイズと同様、タンパク質、脂質、カルシウム、鉄などですが、ダイズには少ない「ビタミンB2」を、ナットウの方が多く含んでいることが特徴です。
ビタミンB2は脂質代謝に欠かせないビタミンです。
ナットウに含まれるビタミンB6は、動脈硬化予防や脂肪肝を予防する効果があります。
また、納豆菌に含まれる酵素「ナットウキナーゼ」には血管の血栓を溶かしやすくする作用があり、脳梗塞や心筋梗塞の血栓症予防に働きかけます。
血液中のコレステロール値を下げる効果もあるとされます。
一説によると、納豆1パック(約50グラム)あたり、約500億個の納豆菌が存在しているそうです。
納豆菌は胃酸に耐え、生きたまま腸まで届き、腸内の悪玉菌等を殺して腸内環境を整えてくれるので、下痢や便秘などで腸の調子が不安定な方に効果があると言われます。
但し、胃酸に耐えられるほどの納豆菌です。
過剰摂取には気をつけましょう。
腸内にいる善玉菌や日和見菌も一掃してしまう可能性もあります。
腸内環境は常在菌のバランスが大事なのです。
二日酔いを軽減する食材としても、ナットウは有効です。
専門医による見解で、お酒のおつまみに積極的に摂って欲しい食材は「タンパク質」、「ビタミンB1」、「食物繊維」の3つだそうです。
「タンパク質」は体内に入ると、アミノ酸に分解、吸収されて肝臓へ運ばれます。
カロリー高めの「動物性タンパク質」を摂取するよりも、大豆などの「植物性タンパク質」を摂るのがお勧めです。
ナットウは植物性タンパク質が豊富であり、ネバネバ成分が胃粘膜を保護してくれます。
「納豆をつまみにすると悪酔いしない」と言われるのはそういう訳なんですね。
昔から、オクラ、ヤマイモ、ナットウなどのネバネバ食材は滋養強壮に良いと言われます。
このネバネバ成分は「ムチン」と呼ばれ、糖とタンパク質が結合してできた多糖類の一種です。
ナットウ、ヤマイモ等に含まれるほか、人の体内(涙、胃腸や鼻の粘膜)に多く含まれます。
ムチンの健康効果としては、「ドライアイ予防」、「胃炎予防」、「疲労回復」、「免疫力アップ」などが挙げられます。
農産物としてのダイズは、品種や産地によって、豆の色にばらつきや差異が見られます。
ダイズに含まれている糖分とタンパク質が反応し、納豆の製造工程(豆を煮る→発酵する→保存する)で黄色から茶色に変わります。
これを東洋医学的な観点から見れば、ダイズが「陰性」から「陽性」の性質に変化したことを意味するそうです。
東北地方では、お腹を壊した時に「(叩き納豆の)納豆汁」を食べることを推奨しています。
東洋医学的に言えば、納豆と温かな味噌汁との相乗効果により胃腸と体を温め、これ以上お腹が緩くならないようにする効果を狙ったものでしょう。
「空腹にも関わらず、普通の食事をすると胃腸が弱っていて消化しきれずにお腹を壊してしまう場合」にも、良質な栄養源で胃腸に負担のかからない「叩き納豆の納豆汁を食べると良い」と言われます。
ナットウの薬味にネギを入れることで、ビタミンAとビタミンCを補うことができます。
また、大根おろしや青海苔、シソ、和辛子なども薬味に加えれば味の変化が楽しめます。
特徴
「ナットウキナーゼ」が血栓症予防に役立ちます。
熱に弱い性質があるので、納豆からナットウキナーゼを摂取する際、加熱せずに食べるのが推奨されます。
ナットウ自体は味が乏しく、鰹節の出汁と醤油を混合したタレが同梱されていることが多いです。
各社、タレに工夫を凝らしています。
ナットウを食べる際、良く掻き回して空気を十分に含ませることで、ふんわりとした食感が生まれ、旨味もアップします。
納豆菌特有の発酵臭があります。
発酵が進み過ぎるとアンモニア臭がキツくなり、腐敗します。
ナットウにはビタミンK2が多く含まれており、特定保健食品として許可されています。
ビタミンK2は骨形成促進作用があります。
ですが、ビタミンK2は抗凝血薬の効果を弱めますので、抗凝血薬服用中はナットウを食べてはいけません。
白米のご飯にナットウをかける「納豆ご飯」が食べ方の主流です。
「納豆汁」、「納豆&キムチパスタ」、「納豆巻き」、「お好み焼きの具として」、「納豆トースト」という食べ方もあります。
酒蔵で働く人は納豆を食べないそうです。
納豆菌は熱に強く繁殖力も凄いので、酒造りに必要な「麹菌」、「酵母菌」が納豆菌に淘汰されてしまうからだそうです。
それほどまでに強力な納豆菌については、「納豆菌は真空でも生きられる」、「納豆菌は宇宙から飛来したエイリアンだ」等々、都市伝説的エピソードが面白おかしく語られています。
また、朝昼晩それぞれ納豆3パックずつ食べ続けた人が、或る日突然の腹痛を起こして病院に駆け込んだところ、医者から「あなたの腸内は納豆菌で占領されています。納豆菌の強烈な作用により、本来は存在すべき腸内善玉菌や日和見菌が全滅。そのため、腸が活動できずに腹痛を起こしたのです」と真顔で言われたとか。
なるほど、「納豆菌エイリアン伝説」に頷きたくなりますね。
あまりの過剰摂取は避けましょう。
種類
秋田県、茨城県水戸市、愛知県、熊本県などで生産されています。
ナットウは粒の大きさによって種類があり、「大粒」、「中粒」、「小粒」、「極小粒」、「超極小粒」、「ひきわり」の順で小さくなっていきます。
「大徳寺納豆」、「浜納豆」などの名産があります。
レシピ
納豆汁
江戸時代から庶民に愛されてきた味噌汁の一つ。
カロリーが低く、胃腸に負担がかかないので各地域で食べられている。
インスタントも発売されているので手軽に作れる。
アボカド納豆トロロ丼
油を使用せず、火も使用しないため、簡単に作れる。
アボカドも栄養価が高い食材であり、納豆とトロロの相乗効果によりダイエットの方にもお勧めのレシピ。
マグロ、オクラを加えても美味しい。
シンプルに、醤油&ワサビで食べるほか、ゴマ油やコチュジャンをかけて辛口にしても。
ナットウ【納豆】 お腹が緩い時の空腹時に、栄養価の高い納豆汁を まとめ
発酵食品であるナットウは良質な栄養源です。
柔らかく食べやすいので、噛む力の弱い高齢者の方や、胃腸の弱い方にもお勧めの食材です。
ダイズ同様の栄養成分を含みますが、ナットウには脂質代謝に欠かせない「ビタミンB2」がダイズより多く含まれます。
また、ナットウに含まれる「ナットウキナーゼ」が血栓症予防に役立ちます。