ナシ(梨)とは、バラ科ナシ属の植物や果実のことで、「和ナシ」、「中国ナシ」、「洋ナシ」の3つがあり、世界各国で食用にされています。
普通、日本語で「梨」と言えば「和ナシ」を意味しています。
「和ナシ」の原産地は中国で、果肉は白く、風味は甘くて果汁が多いです。
芯の部分は酸味が強いので甘くありません。
既に、弥生時代頃からナシは食べられていたらしく、登呂遺跡などからは多数のナシの種子が出土されています。
「日本書紀」にも、五穀とともにナシの栽培を奨励する記述があるそうです。
「ナシ=無し」という言葉に懸けて考えると、「あまり縁起が良くないから」と、庭に植えることを避けたり、平安時代においては縁起担ぎから、わざとナシを「有りの実」と呼んだりしていました。
また、「ナシの礫(つぶて)」は「梨=無し」に懸けて、手紙を書いても、先方からさっぱり音沙汰の無い状況を意味しています。
このように忌み言葉としての扱いが多い「ナシ」ですが、物は考えようで「何もナシ(無し)」に懸けて、盗難除けにナシを家の建材として用いる、また、鬼門の方角にナシを植え、「鬼門ナシ(無し)」などという縁起担ぎの応用も出来得るのです。
食材データ
種類:果物類
旬の季節:秋
主な効能
喉の痛みの緩和、気管支炎の改善
むくみの改善
疲労回復
食欲増進
栄養成分
中国の古書に、「ナシは大小便を利し、熱を去り、渇を止め、痰を開き、酒毒を解す」という記述があるそうで、同様に、イタリア・サレルノの医学校の教科書にも「梨を食べれば小便を促す」と書かれているそうです。
このように、利尿作用が高いことで知られるナシは、総合的に見て、有害物の排泄促進に働く果物だということがわかります。
中国ではモモと並んで好まれる果物であり、「百果の宗(果物の王様)」と呼ばれてきました。
ナシは、ほとんどの成分(約88%)が「水」ですので、「これは!」といった栄養素が豊富に含まれているわけではありません。
甘い果汁を持つ果物ですので、ダイエットにも不向きと考えがちですが、成分のほとんどが水なので、食べ過ぎなければ大丈夫でしょう。
ビタミン類はほとんど含まれていません。
特筆すべき栄養素は、銅とカリウム。
特にカリウムは、体内のナトリウムの排出を促し、体のむくみを予防・改善、筋肉を正常に保つ効果もあり、高血圧予防にも効果があります。
また、ナシはアミノ酸の一種である「アスパラギン酸」を含んでおり、疲労回復に役立ちます。
疲れ切って食欲のない時でも、甘い果汁たっぷりのナシを食べることで癒やされ、大量の水分と共にカリウム、アスパラギン酸をも摂取でき、心身の回復を助けてくれることでしょう。
ナシにはタンパク質分解酵素である「プロテアーゼ」を含んでいます。
調理前に、固い肉にナシのピューレを振りかけて数時間漬け込んでおけば肉を柔らかくする事が出来ますし、食後のデザートにナシを食べれば胃腸の消化を助けてくれます。
ナシには咳止めや解熱効果もあるそうです。
「ソルビトール」という、甘く冷涼感のある糖アルコールが喉や肺を潤し、炎症を緩和してくれるとのことです。
古来から、中国北方は乾燥がひどく、砂塵で喉を痛めることが多かったので、ナシの消炎作用を利用してきたのです。
気管支炎に有効なナシですが、全ての気管支炎に効果があるわけではありません。
水っぽい泡状の痰が出て喘鳴する場合は効果が無いそうです。
ナシのシャリシャリとした食感は、「石細胞」と呼ばれるものが原因です。
「石細胞」は細胞壁に結晶化したセルロースなどの物質が蓄積して石のように硬くなったものであり、細胞自体は死んでいることが多いです。
通常は野菜や果物の皮に多く見受けられますが、ナシには、「石細胞」が果肉に多く蓄積しています。
人間の胃腸では消化されないため、腸を刺激して便通を促すといわれています。
これは余談ですが、なぜ歌舞伎界を梨園(りえん)と呼ぶのでしょう?
その理由は、唐の玄宗皇帝の故事に由来するそうです。
「ナシがたくさん植えてある庭園で玄宗皇帝が役者に芝居の稽古をつけたから」というのです。
由来もそうですが、とても風雅な呼び方ですよね。
特徴
購入の際は、軸がしっかり付いていて干からび感のないもの、張りがあり、手に持ったときにずっしりとした重みを感じるナシが良品です。
お尻の方の甘味が強いため、購入する際はやや扁平気味で、お尻がどっしりとした感じのものを選びましょう。
基本的に追熟しません。
食べ頃のものを購入しましょう。
ナシは冷凍保存には適しません。
食べる1時間程前に冷やしましょう。
長時間冷やし続けると、ナシのジューシな甘味が薄れてしまい、勿体ないです。
ナシにはタンパク質分解酵素があるので、生の状態ですり下ろし、焼肉などの漬け込みダレに利用できます。
種類
中国、アルゼンチン、アメリカ、イタリア、トルコなどで生産されています。
国内では、ナシは沖縄県を除く日本各地で広く栽培されています。
主な生産地には、千葉県、茨城県、栃木県、鳥取県などが挙げられます。
品種は、果皮の色により、「黄褐色の赤梨系」、「淡黄緑色の青梨系」に分けられます。
「幸水」、「豊水」、「二十世紀」などの品種があります。
レシピ
ナシのコンポート
ナシをシロップやワインで煮込んだもの。
そのまま食べても美味しいし、パイやタルトにしても良い。
アイスクリームに添えても。
甘みの少ないもの、食感の悪いものは、コンポートにすれば美味しく食べられる。
ナシのジャム
パンに付けて食べる、ヨーグルトやアイスクリームに添えるほか、ケーキスポンジに混ぜ込んでナシのケーキにするなど、様々なアレンジが利く。
とろみ感が少ない場合は、リンゴなどのペクチンを豊富に含む果物を加えて作ると良い。
ナシ【梨】 プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が消化を促進 まとめ
「ナシが無しに通ずる」として、平安時代においては「ナシ」と呼ぶのを嫌い「有りの実」と呼ぶなど、忌み言葉扱いされてきたナシ。
甘味のあるジューシーな果汁が喉を潤してくれます。
アミノ酸の一種である「アスパラギン酸」を含み、疲労回復を促します。
ナシに含まれる「ソルビトール」という成分が、喉や肺の炎症を緩和します。
ナシに含まれるタンパク質分解酵素「プロテアーゼ」が胃腸の消化を助けてくれます。