「お宝?そんなのあるわけない」
「そういうの、都市伝説って言うんだよ」
「金銀財宝なんて、でたらめだ」
などと多くの人に否定されたり、バカにされながらも、地球のどこかに眠っているはずの財宝を探し続けるのがトレジャーハンターたちの宿命。
宝探しは映画やアニメ、ゲーム、漫画の題材などには結構取り上げられ、ヒット作も多いようですが、現実的に財宝を見つけて「夢を叶えた!」という話は、あまり聞いたことがありませんよね。
と言っても、財宝が見つかったら即大金持ち、見つからなければ一文無しで明日からの食事にも困窮するという天と地の落差が待っているのが多くの場合です。
言わば極端な「一か八か」のバクチのようなものですが、そこがいいと逆に燃え上がる人は少なくないようですよ。
徳川埋蔵金と山下財宝
日本で財宝と言えば「徳川埋蔵金」
徳川幕府崩壊直前に当時の勘定奉行(今なら財務大臣?)であった小栗上野介が群馬県の赤城山麓に隠したと言われているものですね。
第二次世界大戦が終わった時に山下奉文大将がフィリピンに埋めたと言われている「山下財宝」なども知っている人は多いと思います。
「徳川埋蔵金」については、TBS系の人気番組「ギミア・ぶれいく」(1989~1992年放送)で糸井重里氏を中心とした発掘プロジェクトが大々的に放送されたこともあって、国内ではいきなり知名度が上がったそうです。
このプロジェクトでは1990年から7回にわたり発掘作業が行われました。
しかし、結果としては何も発見できなかったのです。
骨折り損のくたびれもうけに終わった糸井氏の「徳川埋蔵金」発掘ですが、その埋蔵額は約360万両(現在の価値で4,000億円以上)とも推定されているようです。
と言っても、それ以降、発掘作業をしているという噂も聞きませんし、今のところ「幻の埋蔵金」となっています。
トレジャーハンター
「トレジャーハンター」というのは、文字通り、財宝=トレジャーを狩る(探す)人達のことを指します。
一番有名なのは、大航海時代と呼ばれた15世紀から17世紀に、多くの財宝船が沈んだと言われているカリブ海での宝探しでしょう。
そこで一番の有名人こそメル・フィッシャーです。
アメリカ・フロリダ沖に眠っていたスペインの財宝船アトーチャ号の財宝を発見した伝説的のトレジャーハンター、その人なのです。
メルの孫で、現在、Salvors Inc.,社の社長であるショーン・フィッシャーは今シーズンも宝探しをしています。
その作業の中で彼や宝探しの仲間たちが何度も何度も繰り返し口にしている言葉があるそうです。
それは
「Today is the Day」
《今日がその日だ》または、《今日こそ見つける日だ》という意味を持ち、祖父のメル・フィッシャーが毎日のように語っていた言葉とのことです。
メル・フィッシャー
メル・フィッシャーについて説明します。
アメリカ合衆国でも有名なトレジャーハンターは1922年8月21日インディアナ州に生まれました。
やがてカリフォルニア州へ引っ越し、結婚。
友人の依頼で行った1715年の沈没船捜索が最初の仕事だそうです。
亡くなったのは1998年12月19日でした。
1985年(昭和60年)7月20日に彼はヌエストラ・セニョーラ・デ・アトーチャ号を発見しました。
アトーチャ号は1622年に沈没したスペインのガレオン船です。
“The Atocha Motherlode,”として知られるその船には大量の財宝がありました。
金、銀合わせて40トン、金額にして4.5億ドルと言われています。
また”ピース・オブ・エイト”として知られるスペインの銀貨が114,000枚、金貨や、コロンビアのエメラルド、金や銀の工芸品、銀塊が1,000個などもありました。
しかし、それは財宝の約半分に過ぎなかったのです。
最も多く財宝を積んでいたと思われる船尾楼の部分には、未だ発見されていない棒銀300個と青銅のカノン砲8砲などが積んであると思われています。
フィッシャーの会社Salvors Inc.,はアトーチャ号の他にも、その姉妹船で同年沈没したガレオン船サンタ・マルガリータ、ヘンリエッタ・マリーとして知られる奴隷船の残骸をフロリダ州沖で発見しました。
アトーチャ号の財宝
メル・フィッシャーが宝探しを始めてから、アトーチャ号の財宝を発見するまでに、17年もの歳月がかかっています。
彼はその間、ずっとこの
「Today is the Day」
と言い続けていました。
この言葉は自分自身を含めた周囲の人を励ます言葉であったのかも知れません。
孫のショーンはお宝が見つからなくてとても苦しい時に、この言葉の意味がわかったといいます。
「17年もトレジャーを発見できなかった祖父の真意がわかった」
「それは絶対あきらめない」
ということでもあったと確信したというのです。
見つかるより、見つからないことが断然多いのがトレジャーハントというものです。
一攫千金なのですが、実際は、地図に落とした区画を着実にひとつひとつつぶしていく地道な作業です。
財宝を見つけるという夢を持ち、それを実現するために、計画的な毎日を送ること。
これは宝探しだけではなく、人生一般に通じる格言のように思えます。
というより、人生とは毎日が自分にとっての素晴らしい宝を探す「宝探し」なのではないでしょうか。
《Today is the Day 今日がその日だ》
心に染みる良い言葉に巡り会えました。
メル・フィッシャー海洋博物館
フロリダ州近海の海底には15世紀や16世紀頃にハリケーンに遭って沈没したスペインの宝船が未だに多く沈んでいます。
アメリカの鉄道王と呼ばれたヘンリー・フラグラーは1912年フロリダ州キーウェストに鉄道を開通させました。
実はそのずっと前から、キーウェストではレッキング、またはサルベージと呼ばれる「沈没船救助」が大きな産業として栄えていたそうです。
メル・フィッシャー海洋博物館は、そのキーウェスト200 Greene Streetにある博物館です。
創設者でもあり、財宝の発見者メル・フィッシャーにちなんでこの名前がついています。
館内には彼が発見した17世紀の難破船ヘンリエッタ・マリー、ヌエストラ・セニョーラ・デ・アトーチャ、サンタ・マルガリータ号などから引き揚げられた財宝の数々が展示されていて、訪れる人の目を楽しませています。
盗難事件発生
人間は輝くモノが好きです。
メル・フィッシャー海洋博物館で何が一番観光客に人気があるかかと言えば、当然純金の延べ棒です。
プレキシガラス(アクリル樹脂)のケースに入っていて、来場者はそれを持ち上げることができました。
直接純金に触れる滅多にない経験ができるということでも好評だったのです。
ところが、2010年8月に2人組の泥棒によってこの純金の延べ棒は盗まれてしまいました。
メル・フィッシャー宝物館
海洋博物館と同じように、メル・フィッシャーの名前を冠した宝物館がフロリダ州セバスチャン1322 U.S. Highway 1にあります。
考古学関係の資料の他に、当時広大な植民地を誇っていたスペインが本国と植民地間の輸送システムとして利用していたインディアス艦隊(1715年)に関わるものがこちらに展示されています。
メル・フィッシャーの娘タフィーは1992年12月、老朽化して使用されなくなった消防署の建物を購入、改装して博物館を開設しました。
父親の死後わずか3年後の開館でした。
館内から保全作業を見るための観察窓や、水中から回収された財宝などを保存するために使用される作業保全研究室などの設備も博物館の中に設置されているので、作業そのものに興味のある人にも人気があるようです。
オデッセイ海洋探査
今まではメル・フィッシャーが引き上げた財宝が、沈没船のお宝としては過去最大の発見と言われていました。
しかし、米国の「オデッセイ海洋探査」という深海探査会社が、この金額をさらに上回る財宝を発見したそうです。
財宝は金貨と銀貨を合わせて50万枚、約5億ドル(約600億円)にも上るらしいですが、保安上の理由から、まだ詳しい情報は公表されていません。
ただ、発見場所は大西洋上のどこかで、17世紀頃の財宝と判断されているようです。
この引き上げ品は、所有権や、いろいろな権利関係に問題がないことを確認した後で、一般に販売する予定になっているそうです。
この他にも第二次世界大戦中の沈没船など、多くの探索を行っている会社です。
なので、これ以外にもたくさんの財宝が海の底から眠りを破って出てくる可能性が大ありです。
まとめ
「七つの海」と呼ばれるように、世界には大海原があります。
そこに、未だ発見されていない財宝が静かに眠っているのかも知ない
-存在がはっきりしないものを探し求めるのは、期待と失望、天国と地獄を味わうことになるのかも…とわかっていても財宝を探さずにはいられない-
この衝動はやはりロマンと表現したくなりますね。