コムギはイネ科コムギ属に属する一年草の植物です。
世界三大穀物(小麦、米、トウモロコシ)の一つで、古来から栽培されている穀物であり、米やトウモロコシと同じく「基礎食料」という位置づけです。
聖書の中にも頻繁に登場し、その名が最初に登場するのは「創世記」です。
日本には中国経由で伝わったと考えられています。
およそ2000年前の遺跡からコムギが出土していることから、弥生時代には既に伝来していたとされます。
紀元前3000年頃の古代エジプトでは、サドルカーンと呼ばれる石臼でコムギを挽き、水を加えてこねて「パンのようなもの」を焼いて食べていたそうです。
この時代のパンはふっくらと焼き上がりませんでしたが、或る日、こねた生地をすぐに焼かずに放置しておいたら、不思議なことに生地が大きく膨らんだそうです。
おそらく、空気中の微生物に含まれていた天然酵母がパン生地に入ったのでしょう……
これを焼いてみると、今までの平たいパンとは違い、柔らかくふっくらとしたパンができました。
このパンが、現在のパンの原形だと言われています。
壁画にも、コムギを収穫している様子が描かれています。
「パンがなければ、お菓子(ブリオッシュ)を食べればいいのよ」
と言ったとされるフランス王妃マリー・アントワネット。
- フランスパンの原料は、一等コムギ粉、塩、水、イースト。
- ブリオッシュの原料は、二等コムギ粉、バター、卵、砂糖、牛乳など。
小型の菓子パンですが、当時はお菓子扱い。
バターや卵、砂糖、牛乳など高価な原料を使うことから、宮廷育ちのお姫様が庶民の暮らしを理解せずに言い放った言葉だとされてきました。
ですが、本当の意味は、「パンの原料である高価な一等コムギを使わず、ブリオッシュの原料である安い二等コムギを使ってパンを作ればいいじゃない」という意味だとか。
更に、この「パンがなければ……」は、現在ではマリー・アントワネットの言葉ではないことが判明しています。
食材データ
種類:穀物類
旬の季節:春・夏
主な効能
肉食中心の人の主食として用いられます。
コムギ胚芽には、ビタミンE、ビタミンB群(B1、B2、B6など)、ミネラル分(カルシウム、鉄など)が含まれており、健康成分として注目されています。
疲労回復効果、老化予防、美肌効果、持久力を高める効果があるとされます。
コムギの外皮は「ふすま」と呼ばれ、家畜の餌をして利用していました。
食物繊維が多いので、最近では特定保健用食品として認定されている商品もあります。
栄養成分
コムギもコメも脱穀してしまえば、素材に含まれるタンパク質は削がれてしまいます。
精白したコムギは、ビタミン類やミネラル類が削げ落ち、その含有量は非常に少ないのです。
コムギの粒は、「外皮」、「胚乳」、「胚芽」の3つで構成されています。
粒のおよそ83%を占める「胚乳」が小麦粉に加工されます。
主成分は、糖質やたんぱく質。
粒のおよそ15%を占めるのが「外皮」の部分です。
製粉工程で「胚乳」と分けられ、「ふすま」として家畜の餌などに利用されます。
粒のおよそ2%を占めているのが「胚芽」です。
「胚芽」には、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンEなどのビタミン群をはじめ、鉄、亜鉛、銅、マグネシウムなどのミネラル成分や食物繊維がふんだんに含まれています。
「胚芽」を食べることで、ガンを始めとする様々な病気予防に役立つと考えられます。
コムギの栄養分を余すことなく取り入れるため、パン主食の欧米でも全粒粉のパン(黒パン)を食べる人が多くなっているそうです。
漢方においての「小麦(ショウバク)」は漢方生薬の1つでもあり、脱穀されたコムギとは違います。
漢方的な考え方としては、「コムギ自体は無毒でも、粉にしてしまえば小毒」です。
飽くまで丸ごとのコムギ粒を使うのが原則なのです。
生薬の「小麦(ショウバク)」の性質は「微寒(微温という説もあります)」。
味や効能は「甘く、滋養強壮、鎮痛作用、毒消し作用がある」、食材の性質は「少し身体を冷やす」です。
ヒステリーや煩熱、糖尿病、下痢、自汗、盗汗に用います。
女性のヒステリーや子供の夜泣きには甘草、大棗などを配合した「甘麦大棗湯」を用い、自汗や盗汗には牡蠣、麻黄根などを配合した「牡蠣散」を用います。
止血や火傷には、粉を外用します。
「ふすま」や「胚芽」を除去した精白粉では、薬効は全くありません。
以上のことから、精白したコムギを使った白パンばかり食べていると、皮膚の乾燥や湿疹トラブル、腹部膨満感、倦怠感、無気力、花粉症などの症状を引き起こすと考えられます。
「ふすま」や「胚芽」を除去した精白粉は体を冷やす性質があるとされますので、肉(陽性食品)と合いますが、牛乳や生野菜などの体を冷やす性質の食品と白パンばかり食べていると、やはり、体の不調を招く恐れがあるということです。
余談ですが、体の冷えからくる症状には、生理不順や水毒(アレルギー性鼻炎など)も含まれます。
特徴
種子を収穫し、コムギ粉として用います。
コムギ粉は、パン、うどん、中華麺、菓子、パスタなどの原料です。
粒の硬さにより、種類と用途が異なります。
加える液体の量により、「生地」や「ルー」などの異なる状態になり、色々なレシピに応用できます。
他の粉と混ざりやすい性質を持ちます。
また、水気のあるものに吸着しやすい性質もあります。
臭いを吸着しやすいので、臭いが強い物から離して保存しましょう。
湿気を好むので、涼しく乾燥した場所で保存しましょう。
虫の侵入を警戒し、きっちりと密封してから保存し、開封後はできるだけ早く使い切ってください。
保存目安は、薄力粉と中力粉がほぼ1年、強力粉はほぼ6カ月です。
種類
コムギ胚芽を含むコムギの原産地は西南アジアです。
生産地は、アメリカ、カナダ、フランス、ドイツ、ロシア、中国、インド、オーストラリアなど。
家庭用の小麦粉には、「強力粉(パンやピザなどに使う)」、「中力粉(うどんなどに使う)」、「薄力粉(ケーキや天ぷらなどに使う)」の3種類があります。
そのほか、コムギの粒を丸ごと挽いた「全粒粉」、パスタ用のコムギ粉として使用する「デュラムセモリナ」があります。
レシピ
フレンチトースト
余った食パンを再加工してフレンチトーストに。
アイスやバナナを載せれば贅沢なパンケーキ風のおやつに早変わり。
サンドイッチ
ハムや野菜の定番サンドイッチに加え、甘くてとろりとした厚焼き玉子を挟んだサンドイッチなら栄養もバッチリ。
コムギ【小麦】 世界三大穀物の一つ。気血を生みだす肉と食べよう まとめ
精白したコムギで作るふっくらと柔らかな白パンはとても美味しいですが、白パンばかり食べ過ぎるのは考えものです。
コムギ胚芽を含むパンを食べるなど、食生活に変化を与えると良いでしょう。