関東煮といえば「おでん」のこと。
発祥地である関東ではおでんと呼び、関西では関東から来た煮物という意味で関東煮(かんとだき)と呼ぶ、って思っていませんでしたか?
まず、関東の味付けは濃口醤油ですこし辛めのもの。
それが関西に伝わると大阪や京都特有の薄口しょうゆをベースとした関西人が好む味付けにした。
私はずうっとこう思い込んでいました。
関西と関東の違い
味付けが濃口醤油ベースか薄口しょうゆベースかというのは色を見てもすぐわかりますよね。
違いはこれだけではありません。
関西の場合、クジラをよく食べていた習慣から「さえずり」や「コロ」をおでんのネタに使うことが多いのに対し、関東では「ちくわぶ」や「はんぺん」などが人気です。
また、関西ではクジラや練り物から出たうまみ成分を大切にし、翌日、また翌日と何年も持ち越す店もあります。
関東煮の起源
関東煮の起源は諸説あるようですが、そもそも関東煮って一体なんなのかと調べたところ、日本で一番古い関東煮屋さんは大阪道頓堀にありました。
「たこ梅」というお店ですが、その起源はなんと1844年です。
今から170年以上も前の江戸末期天保時代に関東煮という名前で食べられていたのです。
「たこ梅」の初代、岡田梅次郎は江戸末期頃に大阪の港町「堺」で中国人が「ごった煮」を食べているのを見ます。
この「ごった煮」は広東料理をもじって「広東煮」と呼ばれていたそうで、岡田梅次郎はこの広東煮をヒントにして「関東煮」をつくったというのです。
しかし、「たこ梅」創業当時は江戸末期、日本は鎖国の真っ只中です。
港町堺でも外国船の入港は禁じられており、「広東煮」という名称は使えません。
この「ごった煮」なんという名称の食べ物にしようか思案し、当時の料理本「節用料理大全」に記されていたタコの煮物に目をやります。
そこには「タコくわんとうに」と書かれていたのをヒントに「広東煮」を「関東煮」としたといいます。
現在も「たこ梅」は5代目岡田哲生さんまで継がれ、著名人にも愛されつづけています。
おでんの由来
関東が発祥だとおもっていた関東煮が大阪発祥だったのには驚きましたが、関東の「おでん」はどうでしょう。
実は「おでん」というのは漢字で書くと「御田」と書き、「田」の字は味噌田楽を表しているそうです。
おでんの「お」は、よく女性が上品にいう時の「お豆腐」などと同じ女房言葉だったのです。
味噌田楽は古くから関東で親しまれてきましたが、江戸時代になり醤油が庶民の調味料になると味噌より簡単な醤油で田楽を作るようになります。
これが「おでん」です。
これ以降、焼いて味噌をつけたものを「田楽」、醤油で煮込んだものを「おでん」と呼ぶようになったといいます。
「関東煮」と「おでん」の発祥は全く違うものでしたが、関東大震災後には関西の料理人も関東へ出ていき、関東・関西の料理の交流が生まれたことで名称は違えどおなじ「ごった煮」はより似ることとなったのかもしれません。
駄洒落じゃないですよ。