理想の睡眠時間

理想の睡眠時間ってどのくらいなのかご存知ですか?
睡眠不足が身体に悪いことは当然ですが、よく寝たからといって、それが健康に直結するとは限りません。
睡眠時間というのは難しいもので、寝すぎたら寝すぎたで、別の心配が出てきます。
下手に眠りすぎると、死亡が早まってしまう可能性もあるのです。

眠りすぎと判断されるのは?

寝る子は育つと言いますが、育ってしまったあとに寝すぎると、どうなるのでしょうか。
じつは、最近の研究では、眠りすぎは死亡を早めてしまう可能性があるとされています。
では、眠りすぎと判断されるラインは、何時間からなのでしょうか。

過剰睡眠

イギリスのキール大学で行われた研究によると、8時間以上からが危険だとされています。
主に睡眠と死亡率および循環器系疾患にフォーカスをあてた研究で、『米国心臓協会ジャーナル(Journal of the American Heart Association)』という学術誌で発表されたものです。

300万人以上を対象に、調査・分析を行った結果、8時間以上の過剰な睡眠パターンを持つものは、循環器系疾患のリスクを視野に入れておいたほうが良いと結論づけられています。
また、10時間の睡眠パターンを持つ場合、7時間の睡眠時間を持つ対象者とくらべて、早期死亡率が30%も高くなっていたことが発表されました。

より詳しく分析すると、脳卒中での死亡率が56%アップ循環器系疾患での死亡率が49%アップしているという結果が出されました。
つまり、長時間の睡眠時間をキープしている人は、なんらかの健康問題を持っている可能性があるのです。

人間は本来、必要以上の睡眠をとることは、不可能な生き物です。
必要とする時間だけ眠ったら、それ以上は眠れなくなるよう、身体ができているのです。
いつもより、長く眠るようになったら要注意。
体内の異常を告げる、シグナルが出ているのかもしれません。

理想的な睡眠時間は?

では、リスクを高めない、理想的な睡眠時間とされているのは、何時間なのでしょうか。
キール大学の研究をもとに、科学的な視点から見た場合、6.5~7.5時間がベストだと考えられています。

ただし、300万人を相手に得たデータは、あくまで自己申告されたものであり、睡眠時の環境も考慮されていません。
夜勤で昼夜逆転の睡眠生活をおくっていたり、赤ん坊の面倒で睡眠時間がぶつ切れだったりなどの、通常とは条件が異なる環境にも焦点をあてながら、研究を網羅していく必要があるとされています。

ちなみに、日本人を対象に、10万人の男女の睡眠時間を調査した研究も存在します。
10年間の追跡調査の結果、日本人では、6.5~7.5時間の睡眠をキープしている人が、最も死亡率が低いというデータが導きだされました。
また、睡眠不足で病気を招くリスクがあるのは、6時間以下の人であるとされています。

以上のことから、上は8時間、下は6時間をラインとして睡眠時間を確保すると良いことが分かりました。
多すぎず、少なすぎず、理想の睡眠時間を守っていくようにしましょう。

眠りすぎがもたらす健康被害は

眠りすぎがもたらす健康被害は、早期死亡率の上昇だけではありません。
死亡まで至らずとも、肉体的または精神的に、健康を損なう恐れがあります。
長すぎる睡眠によって、どのような健康のリスクが高まるのかをチェックしてみましょう。

脳の機能が低下する可能性がある

年配の女性を対象に、6年間の調査を行った研究では、眠りすぎは脳の機能を低下させる可能性があるとしています。
毎日、9時間以上の睡眠をキープしていた女性の場合、2年分の老化と同等の機能低下が見られたというのです。

糖尿病のリスクが高まる可能性がある

カナダで行われた研究では、8時間以上の睡眠をキープしている人は、理想的な6.5~7.5時間睡眠の人と比べて、糖尿病を発症しやすいことが分かりました。
また、オランダの研究でも、7時間睡眠の人と比べて、睡眠時間が極端に長い(あるいは短い)人は、インスリンが十分な効果を発揮できない状態になりやすいとしています。

ただし、インスリンの働きについて、有意性がみられたのは男性だけだったとされています。
そのため、眠りすぎが糖尿病のリスクに影響するのは、男性だけではないかという推測がなされています。

不妊につながる可能性がある。

女性の不妊治療による妊娠率を調査した、韓国の研究では、眠りすぎが不妊につながる可能性があることを指摘しています。
体外受精を行った650人以上の女性のうち、もっとも妊娠率が低かったのは9~11時間の睡眠をキープしていた人たちでした。
逆に、妊娠率が高かったのは、理想的な7~8時間睡眠の女性たちとなっています。

眠りすぎと不妊の関連性については、まだまだ研究の必要があるため、断言することはできません。
しかし、生殖内分泌の専門医によると、睡眠時間が、ホルモンの分泌や月経の周期に影響を与えていることは確かだとしています。

メタボになる可能性がある

カナダで行われた研究では、眠りすぎは、メタボになりやすいという結果も出ています。
理想的な6.5~7.5時間睡眠の人と比べて、睡眠時間が極端に長い人は、調査期間中に食事と運動を調整していても体重が増えたというのです。

とくに、9~10時間睡眠をキープしている人の場合、4人に1人が調査期間中に体重を5Kgアップさせています。
そのため、肥満の原因の一つに、睡眠時間も加える必要があると考えられています。

心臓疾患のリスクが高まる可能性がある

米国心臓協会ジャーナルで発表された研究によると、8時間以上の睡眠をキープしている場合、心臓疾患のリスクが高まる可能性があるとしています。3000人以上の調査対象者から得たデータを分析すると、扁桃炎のリスクが2倍、冠状動脈不全のリスクは1.1倍にアップすることが分かりました。

うつ病になる可能性がある

成人した双子を対象に行った調査では、眠りすぎは、うつ病のリスクを高めるとしています。

7~9時間の睡眠をキープしていた者は、うつ病の遺伝率が27%であったのに対して、9時間以上の場合は、50%近い遺伝率を持っていることが判明しました。

理想の睡眠時間を知る|過剰睡眠は早期死亡率が上がる まとめ

ブラックな職場環境で、睡眠不足のために過労死するケースがありますが、十分な睡眠を取りすぎても、早期死亡のリスクが高まってしまうのには、驚きですね。

何事も、過不足なく行うのが一番良いようです。
理想的な睡眠時間を保てるように調整しつつも質の良い睡眠を得る方法が最も効果的なのではないでしょうか。

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