カボチャ【南瓜】|えっ? ワタのβ-カロテン量は、実の5倍?

「この土手カボチャーッ!」

……と罵る人は、現代社会においてはついぞ見たことはありません。

ですが、こんな表現があるということは、昔はこんな悪口を、あからさまに本人にぶつけていたのでしょうね。

そう、「土手カボチャ」は褒め言葉ではなく、悪口です。

土手カボチャは字の如く、「土手のカボチャのこと」。

昔は河川敷の土手は誰の土地とも定められていなかったため、「飢饉に備えるため」、「貧しい人々の生活の糧として」のカボチャが至る所に栽培されていたそうです。

 

「なぜ悪口なのか」の理由は諸説あります。

  • その一
    「カボチャが日光を浴びすぎると割れてしまい、使い物にならなくなる(売ることもできない)ので、その場に転がしておくだけになる」=その場に居ても役立たずの人、の意味。
  • その二
    「土手に植えられたカボチャは、畑に植えた物とは違い、肥料もやらないため栄養分が行き届かない。結局は食用には適さない」=役立たず、という意味。
  • その三
    「土手に植えられたカボチャは日当たりが良く、大きく育つ」=年齢や性別を考えても、一般的な体型より、どうも育ち過ぎかな? という人に対して揶揄する言葉。のんびりした性格も災いし、「図体がデカイだけで、何もしないんだから!」などと言われ、役立たずの烙印を押されてしまう。

うーん……

これでは、カボチャに対しての悪いイメージがつきまといそうですね。

……ですが!!

カボチャは、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンKなどのビタミン類を豊富に含む緑黄色野菜であり、ミネラル分のカリウムも含まれています。

「役立たず」どころか、「栄養豊富で、我々の食生活に大きな恩恵をもたらす食材」なのです!!

「冬至にカボチャを食べると風邪知らず」と良く言われますよね。

これは、「栄養価の高いカボチャを食べることで、本格的な寒い冬の季節が来ても風邪を引かずに過ごせるぞー!」という昔の人の経験上の知恵から来ているのです。

こんなありがたーい効能を持つカボチャの渡来については諸説ありますが、天文年間(1532年~1555年)、当時の豊後国大名であった大友義鎮(宗麟)に、ポルトガル人がカンボジアから持ち込んだカボチャを献上した、という話が有力とされています。

「カンボジアから来た野菜」が略されていくうちに、いつしか「カボチャ」になったというワケです。

大友義鎮(宗麟)に献上されたカボチャは「宗麟カボチャ」と名付けられました。

ちなみに、大友義鎮(宗麟)はキリシタン大名としても名高い戦国武将であるのはご存じの通り。

キリシタン王国建国の野望を抱き、その目前にして薩摩国の守護大名である島津義久に敢えなく敗れましたが、大友義鎮(宗麟)の類まれなる外交力と好奇心が、未知の野菜(カボチャ)を抵抗なく受け入れることを厭わなかったのでしょうね。

 

食材データ

種類:果菜類
旬の季節:

主な効能

脳卒中、風邪の予防
活性酸素の除去効果

 

栄養成分

「冬至カボチャに年取らせるな」と言われるように、夏から秋に収穫されるカボチャは栄養を損なわずに長期保存が効きます。

ですが、「さすがに冬至を過ぎるあたりには傷んでくるよ、年越し前に食べ切ろう!」と言っているのです。

このように保存が効くカボチャは、昔から野菜不足になる冬期のビタミンAの補給源として重宝されてきました。

カボチャの黄色い果肉にはβ-カロテンが豊富に含まれています。

β-カロテンは、カロテノイドという天然色素の一種であり、体内に取り込まれると必要に応じてビタミンAに変換されます。

β-カロテン(ビタミンA)は、血管壁及び皮膚や粘膜の強化、潤いのある美肌を保つ、動脈硬化予防や夜盲症の予防、眼精疲労軽減、免疫力を高めて風邪や肺炎などの感染症を予防する、などの働きがあります。

カボチャは、とにもかくにも栄養分とビタミン分が多い野菜です。

ビタミン成分においては、特にビタミンEとβ-カロテン(ビタミンA)が高い値を示します。

ビタミンEは強い抗酸化作用を持っており、老化防止効果や、ガンを始め万病の一因とされている活性酸素の除去作用も期待できます。

抗酸化作用を持つビタミンEと、免疫力を高めるβ-カロテン(ビタミンA)を多く含むカボチャを食べることで、「一挙両得!」ですね。

相乗効果が、生活習慣病の予防や改善に働くでしょう。

カボチャのワタ

また、カボチャの「ワタ」には、カボチャの果肉を上回るβ-カロテン(ビタミンA)が5倍以上も含まれる、といわれています。

ワタの部分はドロドロして食べにくいですが、あっさり捨ててしまうには勿体ない! 煮物やスープなどに入れ、果肉と一緒に食べるのが良いでしょう。

「糖質が高い」という点はデメリットかもしれませんが、それを補うに余りあるほど豊富な栄養分を含んでいる甘いカボチャ!

逆に言えば、その甘味が食欲を引き出してくれるのですね。

また、カボチャの種にはリノール酸も多く、ミネラル成分ではカリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などが豊富です。

炒っておやつ代わりにポリポリと齧ったり、加工した物=パンプキンシード(南瓜仁(なんかにん)とも言う)として商品化されている物を購入し、パンやケーキに使用すれば、動脈硬化の予防や改善が期待できます。

 

特徴

カボチャ

硬いカボチャの皮は、長く煮れば柔らかくなります。

でんぷんを糖に変える酵素を含んでいるので、貯蔵や低温で加熱することにより、甘味が増します。

不溶性食物繊維も豊富に含まれており、便秘予防や改善に役立ちます。

但し、不溶性食物繊維を消化しにくい方(胃腸の術後の方など)は、過食は避けましょう。

切っていないカボチャは保存に優れ、常温でも数カ月も持ちます。

果肉が甘いカボチャは、菓子に使うのにも適しています。

パンプキンパイやパンプキンプリンなど。

特にハロウィーンシーズンには、レストランなどやイベント会場など、パンプキン色で溢れ返ります。

ハロウィンのカボチャ

ハロウィーンに欠かせない「ジャック・オー・ランタン(橙色のカボチャの中身をくり抜き、顔に見立てて目・鼻・口の穴を開けた観賞用提灯)」を作るのに使用されるのは、飼料用のカボチャです。

カボチャは、西洋カボチャであれば皮が艶々しているもの、日本カボチャであれば皮に白く粉が吹いたものを選びましょう。

カボチャの下側に黄色い色むらがあるものがありますが、その色はカボチャの果肉の色と同じなので、カボチャを選ぶときの参考にしましょう。

色むらのオレンジ色が濃い物がお勧めです。

軸が太く、切り口が乾燥し、コルク状になっている物が良いです。

丸みを帯びた形が左右対称のものを選び、手に取ったときにずっしりと重みを感じるもの、皮が硬いものを選びましょう。

カットカボチャの場合は、果肉の色が濃いオレンジ色をしていて、種が熟して膨らんでいるものを選びましょう。

 

種類

カボチャ畑

世界中で栽培されています。

国外では、中国、インド、ロシア、イラン、アメリカ、ウクライナ、メキシコなど。

国内では、北海道、鹿児島県、茨城県、長崎県、千葉県、宮崎県など。

多くの品種がありますが、このうち国内栽培のものは大きく分けて「日本カボチャ」、「西洋カボチャ」、「ペポカボチャ」の3種類です。

日本カボチャ

水分が多く粘質で、甘味が少ないカボチャです。

今ではあまり作られなくなってきている品種です。

 

 

西洋カボチャ

甘味が強く粘質で、加熱するとホクホクした食感になります。

 

カボチャ

 

ペポカボチャ

比較的淡白な味のカボチャです。

キュウリに似ているズッキーニも、ペポカボチャの仲間です。

ズッキーニ
ズッキーニ

 

レシピ

カボチャのスープ

ラップをかけ、レンジを使ってカボチャを柔らかくすれば、ミキサー要らず。

味を調えたスープの上にコーヒーポーションやパセリを飾ると、グッと本格派になる。

冷たくしても美味しいです。

カボチャのスープ

 

カボチャの煮物

カボチャ料理の定番中の定番!

火加減に気をつけてホクホクの仕上がりに。

豚挽肉や鳥挽肉と一緒にとろっとしたそぼろ煮にすれば、ご飯が進むおかずになる。

カボチャの煮物

 

カボチャ【南瓜】 えっ? ワタのβ-カロテン量は、実の5倍? まとめ

ビタミンを豊富に含むカボチャの果肉が、様々な生活習慣病の改善に役立ちます。

カボチャのワタには、果肉を超えるβ-カロテン(ビタミンA)が高い値で含まれており、単に捨てるには勿体ないです。

また、カボチャの種には多くのミネラル分が含有されており、これも捨てるには勿体ない栄養分と言えましょう。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう