ジャガイモの発祥地は、南米アンデス山脈の高地とされています。
16世紀にヨーロッパに伝わりましたが、運搬していた船内で芽が出たジャガイモを食べて毒にあたった船員が出たため、「悪魔の植物」と呼ばれて怖れられました。
当時不人気だったジャガイモの普及に成功したのが、ドイツのプロイセンです。
プロイセンは寒冷で痩せた土地が多く、たびたび食糧難に追い込まれていましたが、冷涼な荒れ地でも容易に育つジャガイモを食糧難解決の突破口と考えた「プロイセン王フリードリヒ二世」が1756年に「ジャガイモ令」を発布、人々にジャガイモ栽培を推奨したのです。
「ジャガイモ令」
ジャガイモを人間及び家畜にとって非常に便利で有益な植物として栽培するよう発令する。
ジャガイモの利便性を国民に理解させ、今年の春の間に栄養のある食べ物として栽培を行うよう指示せよ。
初めのうちは、人々がジャガイモの不格好な姿形を嫌ったり、前述に挙げた「悪魔の植物説」が障害となり、なかなか普及が進みませんでした。
ですが、フリードリヒ二世自ら領地を巡ってジャガイモの有用性を説いたり、進んでジャガイモを食べるなどの甲斐あって、18世紀中頃にはようやくジャガイモが食品として認識されるようになったのです。
ジャガイモは「寒さに強く、踏まれても平気で、収穫量もコムギの3倍」。
質実剛健で忍耐強いドイツの国民性を反映しているかのような食材ですね。
日本へは、オランダ人やオランダ造船によって1598年に伝わったとされています。
オランダ領ジャワ島のジャカルタを経由してきたため、「ジャガタライモ」と呼ばれました。
ところで、「男爵イモ」という華麗な名前を持つジャガイモは、メークインと並んでジャガイモ2大品種と言われるほど、我々の食生活に欠かせないジャガイモですよね。
「男爵イモ」は文字通り、明治の男爵「川田龍吉」によって伝播された品種(アイリッシュ・コブラーという品種)です。
彼が函館を訪れた際、青年時代の留学先であるグラスゴーに似た風土に惹かれ、イギリスからジャガイモを取り寄せて栽培を始めたのが男爵イモ誕生のきっかけだそうですよ。
男爵が青年期の留学時代に思いを馳せることがなければジャガイモは栽培されていなかったわけで、あのホクホクと美味しい男爵イモが食卓に載ることもなかったわけですね。
食材データ
種類:根菜類
旬の季節:春・秋
主な効能
美容効果
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の予防
栄養成分
ジャガイモの主な栄養素はデンプン質ですが、ビタミンB群(ビタミンB2、ビタミンB6、パントテン酸など)、ビタミンC、ミネラル群(カリウム、リン、カルシウム、マグネシウムなど)、腸の動きを促進させる食物繊維などがバランス良く含まれています。
特筆すべきは、ジャガイモに豊富に含まれているビタミンCとカリウムです。
通常、ビタミンCは熱や水にさらされることで失われてしまいますが、ジャガイモを加熱調理することでデンプン質が糊状になり、ビタミンCを包み込んで逃しにくくします。
ビタミンCは強い抗酸化作用を持つ栄養素です。
積極的に摂ることで、皮膚や胃腸などの粘膜が健やかに保たれ、老化予防効果や、病気に対する免疫力を高めます。
リンは魚類、乳製品、大豆、肉類に多く含まれる成分ですが、ジャガイモにも含まれています。
体内に摂り込まれたリンは、カルシウムやマグネシウムと共に骨や歯の生成に働きます。
ジャガイモは、美容食としても、抗潰瘍食としても期待されている食材です。
最近の研究で、ジャガイモには、抗ウイルス作用のあるプロテアーゼ阻害物質が含まれていることがわかりました。
また、ジャガイモの皮には、ガン細胞による細胞の突然変異を予防するクロロゲン酸という成分が含まれていることもわかりました。
パントテン酸(「パントテン」は、ギリシア語で「広くどこにでもある」の意)はビタミンCの働きを助け、血中の善玉コレステロールの合成を促進します。
また、副腎皮質ホルモンの働きを向上させ、ストレスを緩和させる作用があります。
また、東洋医学において、ジャガイモは肉の中毒の解毒をしてくれると考えられています。
ジャガイモに豊富に含まれるカリウムが、体内の不要なナトリウムを排泄してくれます。
むくみの改善や血圧を下げる効果があります。
以上のことから、「肉の付け合せにジャガイモは最適な食材」なのです。
特徴
ジャガイモは、ナス科ナス属の多年草の植物で、地下茎を食品として利用します。
皮付きのまま蒸かしてホクホクのじゃがバターを楽しんだり、漉して更に消化の良いスープにすることもでき、色々なレシピで楽しめます。
王道2品種といわれる「メークイン」、「男爵」のほか、様々な新種が開発されています。
ジャガイモの芽や緑化した塊茎には「ソラニン」という毒性成分が含まれています。
過剰に食べると中毒症状を起こすため、芽や緑化部分を完全に除去してから調理しましょう。
購入時は、「皮の緑化変色がないもの」、「皮がなめらかで傷の無いもの」、「重量感のあるもの」、「芽が出ていないもの」を選びましょう。
ジャガイモの皮を使ってガラスや鏡を磨くと、くもり止めになるといわれます。
ジャガイモのデンプンを抽出したものが、「片栗粉」として販売されています。
ジャガイモは、ウォッカなどの蒸留酒の原料としても使われています。
種類
世界の産地は、中国、インド、ロシア、アメリカ、ドイツ、バングラデシュ、フランスなどです。
国内では、北海道、長崎県、鹿児島県、茨城県などです。
「男爵」、「メークイン」、「インカのめざめ」、「レッドアンデス」、「キタアカリ」などの種類があります。
レシピ
ヴィシソワーズ
裏漉ししたジャガイモに玉ねぎの甘味を加えれば濃厚な旨味が出る。
暑い季節にヴィシソワーズ、寒い季節には温めてポタージュに。
じゃがバター
ホクホク熱々のジャガイモに、ほんのり塩気の効いたバターが良く合う。
そのままでお子様のおやつに良し、「じゃがバターに濃厚チーズ」や、「じゃがバターに塩辛」を合わせれば、大人向けの一品に。
ジャガイモ【馬鈴薯】 強い抗酸化作用を持つビタミンCを多く含む まとめ
ジャガイモは、体内の余剰塩分を排出する効果のあるカリウムを豊富に含んでおり、むくみ予防や高血圧予防に効果があります。
抗酸化作用を持つビタミンCが、皮膚や胃腸などの粘膜を健やかに保持し、細胞の免疫力を高めます。
食物繊維が腸内環境を整え、不要物を速やかに排出するように働きかけます。