イチジクはクワ科イチジク属の落葉性の樹木、またはその果実のことを指します。
原産地はアラビア南部。
甘酸っぱい独特の風味の生イチジクを苦手な人もいるでしょう……が、「不老長寿の果物」とも呼ばれているイチジクは昔から人々に親しまれ、絶世の美女、女王クレオパトラのおやつでもあったとか。
漢字で書くと「無花果」。イチジクの外皮の中にたくさんの小花が咲き、外側から見えないことから「花が無い果実=無花果」と名付けられました。プチプチする食感は、イチジクの小さな花々なのです。
イチジクは、聖書にも登場しています。
「旧約聖書」の創世記には、「エデンの園で禁断の果実を食べたアダムとイヴは裸であることが恥ずかしくなり、イチジクの葉で腰ミノを作り、身体を隠した」と記されています。
イチジクはおよそ6000年以上前から栽培が始まったとされています。
原産地のアラビア半島からヨーロッパへ、ペルシャを経て中国へと伝わりました。
日本には、江戸時代に中国から長崎に伝わり、当時は薬用目的での栽培でしたが、徐々に食用目的での栽培が広まっていきました。
「イチジクを家の庭先に植えてはいけない」という俗説を耳にしたことがありませんか?
それはなぜなのか? という理由がいくつか挙げられています。
- 強い根が張り、家の土台石が傾くから
- 葉が茂るので、家の中が暗くなるから
- スズメバチや鳥(カラスなど)が甘い実を狙って頻繁に訪れるから
- 実がなると果実が垂れ下がるようになるので、それと共に家運が下がる、という縁起担ぎから
- イチジクの果実は熟すと割れることから、「身割れ」で身持ちが悪くなるという迷信
- イチジクの果実は熟すと割れることから、「家が割れる=家名断絶」という迷信
- 「無花果」という果実名を忌み嫌い、「花が咲かない=家が栄えない」という迷信
現在ではコンクリート基礎のため、家の土台石はありません。
イチジクの葉で、家の中が暗くならないように方角を選んで植えれば良いでしょう。
ハチや鳥の来襲に備えて、果実の袋掛けなどの保護対策を取れば良いでしょう。
あとの俗説は全て迷信です。
イチジクを摘むと、花柄から白い乳液状の滲出液が出てきます。
これには、ゴムに似た樹脂成分が含まれています。
民間療法としては、その液をイボに塗布してイボ取りに使用します。
小さなイボなら3日程、大きなイボなら1週間程で取れる、とされていますが、正常な肌に滲出液がつくと、かぶれたり、痒みが出たりすることがあります。
食材データ
種類:果物類
旬の季節:夏
主な効能
降圧作用
痔、イボ、便秘の改善
栄養成分
イチジクには独特のネットリとした食感があり、とても甘いです。
クエン酸が少量含まれていますが、糖分(果糖、ブドウ糖)量が多いため、甘味を強く感じるのです。
果実には、ビタミン類(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンCなど)とミネラル類(カリウム、カルシウム、モリブデンなど)が含まれています。
また、イチジクの葉には、「プソラレン(psoralen)」、「ベルガプテン(bergapten)」などの成分が含まれており、これらに血圧降下作用があることが認められています。
民間療法においては、「葉や枝を入浴剤として使えば、痔や神経痛、婦人病や冷え性に効果がある」とされ、生の葉と茎を刻んで木綿袋に入れ、水から沸かして煎じます。
この煎じ薬を入れて座浴すれば、痔が快方に向かうといわれています。
漢方においても、「イチジクには清熱解毒・潤腸の効能がある」とされ、喉の痛み、便秘や痔やイボなどの治療に用います。
果実を生で食べても良いですが、乾燥してから煎じて飲むなどの方法もあります。
イチジクには、フィシンというタンパク質分解酵素が含まれています。
「イチジクを触り続けていると指紋が消える」と言われるほどフィシンのタンパク質分解能力は強く、肉料理にイチジクを使えば肉が柔らかくなって食べやすくなります。
タンパク質分解酵素のフィシンのほか、消化酵素である「リパーゼ」や「アミラーゼ」も含まれています。
食物繊維の一種であるペクチンは便秘や下痢などを解消する効果があり、コレステロール値を下げる効果、血糖値の上昇を抑える効果、更には疲労回復効果もあります。
便秘気味の方は、生のイチジクを1日2~3個程度を常食すれば、改善が期待できます。
ヨーグルトと合わせて食べても良いでしょう。
但し、食べ過ぎるとお腹が緩くなる可能性もあります。
イチジクの糖質やカロリーを考えれば、食べる上限は1日3~4個までです。
新鮮なイチジクの葉や茎を切ると出てくる白い乳液状の浸出液には、ゴムに似た樹脂成分が含まれています。
外用薬として、イボ取りや魚の目取り、水虫など改善に効果があるとされますが、生の汁はかぶれやすく、アレルギー体質の方や肌が敏感な方は注意が必要です。
特徴
イチジクは皮を剥いて食べるのが普通ですが、薄い皮であれば食べることができます。
購入の際は、「皮に張りがあって傷が無いもの」、「形良くふっくらとしているもの」を選びましょう。
新鮮なイチジクにはヘタの切り口部分に白い滲出液がついています。
保存があまり効かず、時間が経つと乾燥して甘味が失われてしまうため、冷蔵なら1日、冷凍なら1週間を目安に食べ切りましょう。保存の際は、ビニール袋に入れましょう。
ジャムやコンポートや果実酒にすれば保存が効きますね。
食べ方としては、皮を剥いて生食するほか、カットして生ハムやスモークサーモンを巻いたり、肉料理に使ったり、天ぷらにしても。
乾燥イチジクにすれば栄養価が更に上がります。
食物繊維の量が増えるので、便秘にも効果的です。
イチジクの皮を剥いて手が痒い場合は、皮は食べない方が良いでしょう。
花粉症やゴムアレルギーの方は、イチジクアレルギーもあるかもしれません。
種類
地中海沿岸の国や、アメリカのカリフォルニア州などで生産されます。
エジプト、トルコ、イラン、アメリカ、ブラジルなどが挙げられます。
国内では、愛知県、和歌山県、福岡県、兵庫県などで生産されます。
「桝井ドーフィン」、「蓬莱柿(ほうらいし)」、「とよみつひめ」、「ビオレ・ソリエス」、「スミルナ」、「カドタ」などの品種があります。
レシピ
イチジクジャム
フルーティで美味しい。
イチゴジャムより更にジューシーで美味しいという声も。
生イチジクが苦手な方にお勧め。
トーストやクラッカーにつけて食べるほか、ヨーグルトと合わせたり、チーズに添えても。
イチジクのコンポート
シロップやワインで煮込んだお菓子。糖度が比較的低く、果実の風味や食感も楽しめる。
ヨーグルトと合わせたり、アイスクリームに添えて食べると美味しい。
イチジク【無花果】 食べれば整腸。外用すれば痔や水虫に効果も? まとめ
「不老長寿の果物」とも呼ばれているイチジク。
ビタミン類、ミネラル類をバランス良く含んでいます。
「フィシン」という強力なタンパク質分解酵素が含まれており、肉料理にイチジクを使って柔らかくすれば食べやすくなり、消化しやすくなります。
消化酵素である「リパーゼ」や「アミラーゼ」も含まれており、胃もたれしがちな方にもお勧めの食材です。
食物繊維の一種である「ペクチン」が豊富に含まれおり、整腸作用が期待できます。
また、民間療法においては、葉や枝を入浴剤として用い、痔や神経痛、冷え性などに効果があるとされます。
白い浸出液をイボや水虫に付ければ症状が改善すると言われますが、正常な肌につけるとかぶれることがあります。