21世紀の現在、医学の進歩によって、人は頭部移植手術に着手するまでになりました。
別々の遺体の頭部と体をつなげた事例は衝撃的ですが、18世紀に人体のパーツをつなぎ合わせ、命を与えようとした医学者がいたと言われています。
怪物「フランケンシュタイン」の生みの親、ヴィクター・フランケンシュタインです。
怪物「フランケンシュタイン」とは
怪物「フランケンシュタイン」は、1818年に発表された小説に登場した、巨人の怪物のことです。
後に映像化されたことで、イメージが定着し、知名度も上がりました。
しかし、「フランケンシュタイン」は、正確には怪物を示す名前ではありません。
彼を生みだした医学者、「ヴィクター・フランケンシュタイン」のものです。
小説「フランケンシュタイン」の主人公である、スイス生まれのヴィクター・フランケンシュタイン青年。
若干17歳という若さで、ドイツの大学に留学し、自然科学の研究に意欲を燃やしていました。
やがて、研究にのめり込むあまり、狂気の実験に手を出してしまいます。
死体のパーツをつなぎ合わせ、命を与えようと考えたのです。
結果、実験は成功し、身長8フィート(約2m44cm)の怪物が誕生することになりました。
明確な知性を宿すが、おぞましい姿をもつ怪物。
生みの親の青年でさえ、その姿に恐れをなし、怪物を捨ててスイスに帰国してしまうほどでした。
取り残された怪物は、知性があるがゆえに、自分の醜い姿が人々に恐怖を与えることを理解してしまいます。
人との交流を求めるも孤独に苛まれ、ついにはスイスのフランケンシュタイン青年を訪ね、自分と生涯を共にできる女性型の怪物の作成を懇願します。
願いが叶えられれば、人のいない土地で静かな生活をおくると提案しますが、青年が新たな怪物を作成することはありませんでした。
怪物は怒りに狂い、青年の友人や家族を、次々に殺していくようになります。
そして、怪物と青年、互いに復讐を果たすための戦いの幕が開けるのです。
実在していた?ヴィクター・フランケンシュタイン
怪物の生みの親、ヴィクター・フランケンシュタインは、実在の人物であったという説があります。
その根拠となるものが、18世紀に書かれたという「ヴィクター・フランケンシュタインの日記」の存在です。
この日記によると、ヴィクター・フランケンシュタインは、ドイツのインゴールシュタット大学で解剖学を学んでいた青年でした。
解剖学に没頭していた青年は、いつしか小説と同じように、死者に新たな生命を与える研究に取り憑かれていきます。
日記には、墓場や死体置き場などから、死体を盗み出して実験を行っていた様子が記されていました。
「二ヶ月ほど子宮内で育っていた胎児の死体を手に入れた。輸血を行なうも、途中でうたた寝をしてしまい、目覚めたときには恐ろしい光景を目の当たりにした。二倍もの大きさに膨れあがり、形が崩れてスポンジのようになった胎児だ。血管が透けて、体内のあちこちでうごめいているのが見えた。」
この他にも、墓場のウジだらけの死体から臓器を切り取る様子。
手や脚、鼻や目玉などの人体のパーツをつなぎ合わせていく様子などが続きます。
しかし、脳の作業が困難を極め、なかなか新しい命を与える段階にたどり着かない毎日・・・
焦りを覚えたフランケンシュタイン青年は、新鮮な脳を得るために、越えてはいけない一線を飛び越えてしまいます。
「1774年4月21日。弟子とともに、森で遊ぶ子どもを攫ってきた。背後から棒で殴り、意識を失った子どもを担いで運んでいると、遠くから母親が子どもを呼ぶ声が聞こえた。」
罪の意識を覚えるも、実験の誘惑に負け、攫ってきた子どもを殺してしまいます。
新鮮な脳を摘出し、あらかじめ身体を組んでいた人造人間の頭部に移植します。
しかし、その結果は、あまり思わしくないもののようでした。
「明日はもっと強い電流を流そう。そうすれば、体内の眠っている力が蘇ることだろう。手術はすべて完了した。しかし、終わってみるとどうだろう、科学者としての喜びよりも、人としての罪の意識に押しつぶされてしまいそうだ。なんと恐ろしいことをしてしまったのか・・・」
その後の実験の結果は、知ることができません。
日記が、ここで終わっているためです。
ヴィクター・フランケンシュタインの日記~青年が没頭した解剖学~ まとめ
フランケンシュタイン青年の狂気の実験。
成功し、新たな生命を与えられたのか。
失敗し、更なる犠牲者を増やしたのか。
罪の意識に耐えかねてしまったのか・・・真実は、闇の中に消えたままです。
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