何を演じても当たらない役者のことを「大根役者」といいます。
これは、食材である大根(ダイコン)を生で食べても煮ても焼いても消化が良くお腹を壊さない、食当たりしない(=何をしても当たらない)ことからきています。
「当たらない」なんて言われる役者さんには不名誉な喩えでも、食材のダイコンを考えると、これほど端的な喩えはないでしょう。
煮ても焼いてもおろしても、ダイコンは美味しく食べることができますからね。
古代エジプトでは、ピラミッド建築に携わる労働者の食料として、タマネギ、ニンニクを中心に、二十日大根(ハツカダイコン)も支給されていたそうです。
「ピーターラビット」の絵本に出てくるうさぎのピーターが、農夫のマグレガーさんの畑に忍び込んでこっそり食べてしまう野菜も、実は二十日大根です。
日本には中国経由で伝わりました。
「古事記」にも記載があり、その後、徐々に栽培されるようになり、江戸時代前期には広域に亘り、本格的な栽培がなされるようになりました。
「大根足(ダイコンアシ)」なんていう、太い足の女性を揶揄する言葉がありますが、これは江戸時代後半から使われていたそうです。
特別な悪意はなく、飽くまで「大根のような」という視覚イメージとして使われていたとか。
しかし、現代において「大根足」は嘲りの意味で定着していますから、女性に面と向かってこんなことを言おうものなら、セクハラで訴えられかねません。
また、江戸時代より遡りますと、ダイコンは今のように太くなく、ニンジンを一回り大きくした程度(女性の腕の細さくらい)だったそうで、ダイコンと言えば、「白くて美しい女性の腕」を褒める意味で使っていたとか。
ダイコン栽培に精を出す農婦の日焼けした顔を見た弘法大師が、「日焼けした顔をダイコンのように白く美しくしたいか?」と問いかける逸話があり、ここでも、ダイコンが白くすべすべとして美しい、と称える形容に使われていることがわかります。
食材データ
種類:根菜類
旬の季節:冬
主な効能
胃痛、胃もたれ、二日酔いなど消化促進作用
気管支炎の改善
ガン予防
栄養成分
生のダイコンにはアミラーゼ(ジアスターゼ)を始めとする有益な酵素が豊富に含まれています。
アミラーゼは、すい臓や唾液腺から分泌される消化酵素のことです。
アミラーゼを始めとする様々な酵素は熱に弱いので、「消化機能促進効果を十分に摂りこむためには、生のダイコンを食べなければならない」のです。
つまり、生ダイコンを擦り下ろして「大根おろし」にして食べるのが最も適しており、アミラーゼ酵素がデンプンを分解して消化を助け、リパーゼ酵素が脂肪を分解してくれます。
これら酵素が胃腸機能を高めるので、胸やけや胃もたれしやすい方、二日酔いの方にもお勧めです。
大根の根や葉の部分には、ビタミンCが豊富です。
ビタミンCには、シミや皺の予防、皮膚に張りを与える健康維持効果(抗酸化作用)があります。
また、免疫力を高めたり、ストレスへの抵抗力を高める作用もありますので、風邪予防やストレスの軽減、食中毒予防にも期待できます。
ダイコンを「大根おろし」にすると、ワサビにも含まれる辛み成分である「イソチオシアネート」が生まれます。
場合によっては、ピリッとしてツーンと鼻に抜ける、非常に辛い「大根おろし」が出来上がりますよね。
「イソチオシアネート」には解毒作用、殺菌作用、抗炎症作用がありますので、食中毒の予防や、発がん抑制などに効果があるとされます。
焦げた魚の焦げ部分には発ガン物質があるといわれ、「大根おろし」を添えてあるのは発がん抑制のためだ、とよく言われますが、よほど大量に魚の焦げばかり食べ続けない限りは、ガン発症を深刻に心配する必要はないです。
辛み成分が胃液分泌を高めて消化を促しますので、便通が良くなります。
ピリ辛成分「イソチオシアネート」は、ダイコンの先端部分と皮に特に多く含まれています。
皮ごと擦り下ろせば、なお効果的です。
ダイコンには鉄とマグネシウムも含まれています。
鉄は貧血を予防し、マグネシウムは様々な酵素の働きを助けて血液循環を正常に保ってくれます。
ビタミン群では免疫力アップ効果があるビタミンCが突出していますが、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6なども含まれており、粘膜保護に働きかけます。
以上のことを踏まえて考えれば、「大根おろし」を食べることで風邪予防や気管支炎(去痰、咳止め)などにも功を奏します。
よほど喉の痛みがツライのであれば、「蜂蜜大根(ハチミツダイコン)」にして食べやすくしても良いでしょう。
漢方学からみれば、ダイコンは「性:涼で、余分な熱を取る働きをする」ので、体に不要な熱がこもり、それが原因で咳込んだり、痰が出る場合に使います。
調理法によって素材の性質が変わるため、「天火で干した切り干しダイコン」や「ぐつぐつ煮込んだダイコン」は陽性の食べ物になり、身体を温める効果があります。
特徴
ダイコンは(できるだけ生で。最も良いのは「大根おろし」)丸ごと食べましょう。
ビタミンCの含有量は葉が一番多く、皮、中心部、の順に続きます。
皮には中心部の2倍ほどのビタミンCが含まれています。
皮ごと擦り下ろして「大根おろし」にして食べましょう。
葉にはカルシウムや鉄分などが多く含まれ、栄養の宝庫です。
棄てずに食べて活用しましょう。
「ダイコン頭にゴボウ尻」ということわざがある通り、ダイコンは葉に近い上部の太い部分が甘く、細くなっている先端が辛いのです。
ダイコンは、春の七草の一つで「すずしろ」とも呼ばれます。
種類
原産地は地中海地方や中東です。
現在、ダイコンは日本全国で栽培され、北海道、千葉県、青森県、宮崎県、神奈川県などが主な生産地です。
青首大根、三浦大根、桜島大根、聖護院大根、守口大根などの種類があります。
レシピ
ダイコンの甘酢漬け
甘酢に漬けた即席の漬物。
食欲が無いときや、ご飯の箸休めに。
あまり日持ちしないので、早めに食べ切りましょう。
風呂吹き大根
寒い夜にうってつけ。
たっぷりの出汁で煮込んだダイコンに味噌だれをかけて。
肉味噌あんかけにしても美味しい。
ここまで作っておけば、ぶり大根にも応用が効く。
ダイコン【大根】 大根おろしが、二日酔いにも咳止めにも効果的 まとめ
煮ようが焼こうが擦り下ろそうが、食当たりを気にすることもなく美味しく食べられる食材、ダイコン。
豊富に含まれている酵素は熱に弱いので、生の大根を擦り下ろし、「大根おろし」として食べるのが最も効果的な食べ方です。
酵素が消化機能を促進し、ビタミン群が免疫力を高めます。
それらの効果が合わさることで、去痰効果や風邪予防、二日酔い改善に働きかけます。