コーヒーが様々な病気の予防に効果的であることは、近年よく知られてきました。
では、日本人の死因の上位を占めるがんについてはどうでしょうか。
これについても、さまざまな研究が行なわれていますので、部位別に紹介してみましょう。
肝臓がん(肝がん)の予防効果
厚生労働省の研究グループは、1990年代からおよそ9万人の男女に対して10年近くかけて追跡調査を行ないました。
この調査によると、コーヒーをほぼ毎日飲む人は、ほとんど飲まない人と比べ肝臓がんの発生率は半分ほどになっていました。
また、1日にコーヒーを飲む量が多い人ほどこの発生率は低く、毎日5杯以上飲む人は、それほど飲まない人と比べて4分の1まで減少していたとのことです。
緑茶にもコーヒーと同程度のカフェインが含まれているので、緑茶でもデータを取ったということですが、緑茶の場合は発生率の低下がほとんど認められませんでした。
この結果から、これはカフェインの効果ではなくクロロゲン酸(コーヒーポリフェノール)などの抗酸化物質の効果ではないかと推測されています。
ガンマ値(γ-GTP)の上昇と発がんを抑制する
他の研究でも、コーヒーを良く飲む人の方が、アルコール性肝障害の指標として用いられるγ-GTPの数値が低いというデータがあります。
さらにラットを用いた別の実験では、肝臓がんの原因とされる発がん物質に加えて人間が飲むよりも薄めのコーヒーが与えられましたが、発がん物質だけでは78%のがん発生率だったものが、22%まで抑えられたという結果が報告されているとのことです。
大腸がんの予防効果
岐阜大学の大学院医学研究科の森秀樹教授の研究チームでは、被験体としてハムスターが用いられ、発がん物質だけを投与したハムスターと、発がん物質に加えてコーヒーに含まれるクロロゲン酸を共に投与したハムスターを比較して、大腸がんの発生率を調査しました。
結果は興味深いもので、発がん物質だけを投与したハムスターは全体の40%に大腸がんが発生しましたが、クロロゲン酸を共に投与したハムスターにはがんの発生が全く見られなかったということです。
腸の運動を活発にする
厚生労働省の研究グループも、40~69歳のおよそ10万人の男女を対象に、10年間かけて大規模な追跡調査を行ないました。
こちらの結果も興味深いもので、コーヒー飲む女性の場合は特に結腸浸潤がんのリスクの低下が見られました。
この要因としては、コーヒーにより腸内の胆汁酸や中性ステロールの濃度が抑えられることや、腸の運動が活発になること、高血糖を防ぐ効果や、クロロゲン酸などの持つ抗酸化作用などが挙げられています。
このように女性では大腸がんのリスクの軽減にコーヒーの効果が認められましたが、一方で男性の場合はコーヒー摂取と大腸がんの関連を裏付けるデータが得られなかったということです。
これは、調査された男性の9割以上の人に喫煙や飲酒の習慣があったためだと考えられています。
喫煙によるコーヒーの健康効果の喪失については「コーヒーは健康飲料」の項を参照してください。
直腸がんについての研究
愛知がんセンター研究所の研究チームでは、1988年以降に病院を訪れたすべての患者を対象として調査を行ないました。
その結果、コーヒーを1日に3杯以上飲む人は、直腸がんの発生率がおよそ半分になるということが分かりました。
この調査では上部消化器のがんについても、コーヒーの予防効果が高いことも明らかになりました。
例えば男性の場合は食道がんになるリスクが35%低下し、女性では胃がんになるリスクが28%低下したと報告されています。
肺がんについての研究
国立がんセンターの研究チームによる調査では、およそ10年間にわたって40代~60代の男女9万人についてデータが集められました。
それによると、コーヒーを毎日飲むグループの肺がんにかかるリスクは、コーヒーをほとんど飲まないグループの約半分ほどになるということが分かました。
さらに、コーヒーを1日5杯以上飲む人の場合は、コーヒーをほとんど飲まない人に比べて肺がんにかかるリスクは4分の1程度まで低下したということです。
すい臓がん(膵がん)についての研究
厚生労働省の研究グループが、年齢が40~69歳までの男女13万人を対象にしたアンケートを行ない、コーヒーとすい臓がんの発症率の関連についての大規模な調査を実施しました。
その結果、男性の場合はコーヒーを毎日3杯以上飲む人は、ほとんどコーヒーを飲まない人に比べて、すい臓がんの発症率がおよそ4割も少ないことが分かったということです。
不思議なことに、この傾向は男性だけに見られ、女性については有意義なデータが出てきませんでした。
生活習慣や体質の組み合せによって、得られるデータにはかなりの違いがありそうです。
この調査では、緑茶の摂取量についても調べられましたが、緑茶の場合は発症率に変化はなかったということです。
子宮体がんについての研究
子宮体がんは、子宮の袋状になった部分の内膜に発生するもので、子宮の入り口にできる子宮頸がんとは区別されています。
子宮頸がんの主な原因はウイルスの持続感染にあるとされていますが、子宮体がんの場合は女性ホルモンであるエストロゲンや血糖値を調節するインスリンとの分泌との関連が指摘されています。
この子宮体がんについても、厚生労働省の研究グループが調査を行なっています。
この調査は40~69歳の女性およそ54,000人を対象にしたもので、コーヒーの摂取量とと子宮体がんの発生率についてデーターが集められました。
結果として、コーヒーを毎日1~2杯飲む女性は、週に1~2日しかコーヒーを飲まない女性に比べて、子宮体がんの発症率が4割も少ないということが明らかになりました。
さらに、コーヒーを毎日3杯以上飲む女性は、子宮体がんの発症率がなんと6割も低くなっていました。
コーヒーを飲む量が多いほど発症率が低い傾向です。
なぜこのような結果となるのかについては諸説ありますが、コーヒーがエストロゲンやインスリンの分泌に影響を与えることによって、子宮体がんのリスクを低下させているのではないかと考えられています。
ちなみに、この調査でも緑茶の摂取量について調べられましたが、緑茶の場合は発症率に特に変化はなかったということです。
コーヒーを飲むことで発がんを予防する効果を期待できるのか!?
このように、多くの研究において、コーヒーにがんを予防する効果があることが発表されています。
ただ、留意すべき点として、ウイルス性慢性肝炎や肝硬変など病気のために肝機能が低下した状態にある人の場合は、カフェインを代謝することが難しいので、当然コーヒーを飲む量が減ります。
このような人が将来肝臓がんにかかる可能性が高いという点を加味すると果たしてどうなのかという考え方もあるようです。
確かに、もともと体調の悪い人がコーヒーをたくさん飲むというのは考えにくい感じがします。
ということで過信はできないものの、コーヒーにはがんを予防する効果があると期待してよいようです。
発がんを予防するには・・・
さて、身体のことを考えるなら、新鮮でグレードの高いコーヒー豆を使用するのが一番です。
コーヒー豆は、焙煎後は時間が経つほど酸化(劣化)してゆきます。
そして、新鮮な状態のコーヒー豆ほど、有効成分がしっかり残っています。
さらに、新鮮なコーヒーは雑味やえぐみが無いので、砂糖やミルクなどを入れずにブラックで飲んでも非常においしく、1日に何杯でも飲むことができます。
一方、焙煎してから数か月も経ったコーヒー豆は、もはや別物と言ってもよいほど劣化しています。
このようなコーヒーは砂糖やミルクを入れなければ飲めたものではありません。
有効成分が少なくなり、さらに砂糖やミルクを入れたコーヒーは、身体に良いとは言えないでしょう。
今では高品質で新鮮なコーヒー豆を通販にて購入できるのでご利用してみてはいかがでしょうか。
飲み方については、フレンチプレスやペーパードリップで淹れるのが簡単でおすすめです。
コーヒーはあらゆる「がん」に予防効果があるのか!?~肝臓、大腸、肺、直腸、すい臓、子宮体がんの研究結果~まとめ
最後に、たばこやお酒の飲みすぎはがんのリスクを大幅に高めますので、ぜひご注意ください。
また、熱い飲み物もリスクを高めるという報告がありますので、幾分冷ましてから飲むようにするとよいかもしれません。
ではこれからも新鮮で美味しいコーヒーで、至福のひと時を楽しみましょう。
→アディポネクチンの効能と増やす方法!検査でわかるメタボ予防と増やす食材!コーヒーが効果的?