アンコウ【鮟鱇】|グロい顔の海のフォアグラ。七つ道具で栄養満点

「西がフグなら東はアンコウ」

冬の鍋対決で良く聞かれる台詞です。

どちらに軍配が挙がるかは別として。

それにしても、一体誰が最初に食べたのか?

醜悪としか言えない、あのグロテスクな顔を持つ魚、アンコウ。

しかし、あの恐ろしい外見からは似ても似つかぬほど、その味は上品で淡泊、そして何よりも美味!

アンコウ

なかなか都内ではお目にかかれない「アンコウのどぶ汁」は、アンコウと味噌だけ、または、野菜と味噌とアンコウを鍋で煮込むだけの簡単料理。

にも関わらず、その味は絶品! 味噌とアンキモのハーモニーが汁の中にこっくりと溶け込み、じっくりと濃厚なコクが出る。

冬の寒い日に食べれば、凍えた心と体に豊富な栄養がいきわたり、体の芯からほかほかと暖まる。

食べ終えた頃にはアンコウの皮にたっぷりと含まれるコラーゲンでお肌はプリプリ、心もほっこり……といった具合です。

どぶ汁は、アンコウが水分の多い魚だからこそできる調理法です。

淡泊な身に比べ、アンコウの肝(アンキモ)は「海のフォアグラ」とも呼ばれ、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD、DHA、EPAなどの栄養価の高い成分がみっちりと詰まっています。

かくも栄養素が詰まった肝臓をどれだけ持っているかで、そのアンコウが高値で取引されるか否かが違ってくるそうです。

 

食材データ

アンキモ

種類:魚類
旬の季節:

主な効能

冬の活力源として
肌の健康を維持する
老化防止対策

 

栄養成分

アンコウの七つ道具

アンコウは、体重のおよそ8割(水分含有量85%以上)が水分でできており、タンパク質や脂肪分が少ないので、白身はあっさりとした淡泊な味です。

体が柔らかく、体表面はぬめぬめしてつかみどころがなく、他の魚のようにまな板の上で捌けません。

そのため、特殊な捌き方が考案されました。

アンコウを吊るして回転させながら捌く「吊るし切り」という方法です。

歯、目、骨を除き、加熱すれば棄てる部分がほとんどない魚で、捌く際にはアンコウの身体を七つの部位に解体します。

これを「アンコウの七つ道具」と呼びます。

①キモ(肝臓)

アンキモと呼ばれ、その見た目と食感から「海のフォアグラ」とも称されます。

酒の肴として最高です。

脂質が多く高カロリー。

ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンDなどの栄養分が豊富に含まれています。

老化防止にも効果があるとされています。

②カワ(皮)

ゼラチン質でコラーゲンたっぷりです。

味が良く、代表的な一品料理としては「とも酢」が挙げられます。

③ヌノ(卵巣)

食用になるアンコウは主にメスです。

オスはあまり大きくならないので、食用にしません。

鍋で煮込んだ時、良い味の出汁になります。

⑤トモ(尾ビレ、胸ビレなど)

コラーゲンが含まれており、付け根の食感が良く、美味しいです。

⑥エラ(えら)

コリコリした食感がたまらない。

⑦水袋(胃)

雑食性のアンコウは、時に驚くようなものを飲みこんでいます。

様々な小魚は勿論、アンコウの中にアンコウが入っていることもあります。

アンコウは獲物を丸呑みにする習性があるので、形状が保たれたままの魚介類が入っていることも多いです。

前述の通り、「西のフグ、東のアンコウ」と言われるほど美味な魚で、関東では冬を代表する味覚の一つです。

アンコウは海外でも食べられています。

フランスでは、アンコウは冬を代表する魚として定着しており、その人気はオマール海老にも引けを取らないとも言われます。

フランスマルセイユの名物料理、ブイヤベースにも欠かせない魚です。

ですが、「アンコウの七つ道具」の概念はフランスにはないようで、一番重要な肝の部位は、缶詰としてオイル漬けで売られています。

日本の調理法「アンコウの七つ道具」は、理にかなった調理法と言えます。

七つ道具を入れ、煮込んで鍋にすることで、それぞれの部位が味わえるので楽しめます。

アンコウを食す醍醐味と言えましょう。

アンコウ鍋

白身部分は淡白な味で低カロリーですが、肝は脂質が多く高カロリー。

肝にはビタミンAビタミンB12ビタミンDDHAEPAなどの栄養分がたっぷりと含まれています。

皮やヒレには多くのコラーゲンが含まれており、美肌の保持にも大いに貢献してくれます。

アンコウは、海底でじっとしている待ち伏せ型の狩りをします。

誘引突起と呼ばれる背ビレの一部を餌のように見せかけて振ることで、餌となる小魚をおびき寄せ、近くに来たところを見計らってパクリです。

その生態から、道端で客を待っている娼婦などにもなぞらえられます。

また、太って腹の出ている力士のことを、アンコウの体形になぞらえて「アンコ型」と呼びますし、酔っぱらって醜く歪んでいる顔を指して「アンコウが酒粕に酔ったよう」などと表現します。

大風呂敷を広げるくせに、実は臆病な武者を嘲る言葉に「アンコウ武者」というのもあります。

疑似餌をちらつかせて騙し打ちで獲物を狩るアンコウの生態になぞらえているのかもしれません。

他には「アンコウの待ち食い」が、ことわざとして挙げられます。

いずれもイメージ的にはあまり良くはありませんが、料理としてのアンコウは栄養たっぷり、冬場の冷えた体を暖める、とっておきの活力源なのです。

 

特徴

 

高級魚として知られているアンコウは、水深100~500メートルに生息する深海魚。

深海の水圧に耐えられるように、あのぽにょぽにょした体型になったのだとか。

元は、漁師から雑魚扱いされている魚でした。

そのうち、味の旨さから庶民にも知られるようになり、江戸時代の頃には五大珍味の一つにも数えられるような高級食材に変貌を遂げました。

アンコウの肝の脂肪をマグロと比較してみると、マグロ3%に対し、アンコウは40%。

これが濃厚な味の差として出てくるワケです。

アンコウは深海に暮らしているため、食べた獲物の栄養を脂肪として肝臓に蓄え、必要な時に少しずつ消費していくのだそうです。

アンコウ鍋の有名どころは茨城県の大洗町。

観光客向けに「アンコウの吊るし切り」を目の前で見せてくれるところもあります。

 

種類

 

ミツクリエナガチョウチンアンコウ、ニシアンコウ、アメリカアンコウなど200種類以上のアンコウがいますが、日本で食用とされるのはキアンコウとクツアンコウです。

キアンコウは、市場で広く流通しています。

海外で主に食べられているアンコウはアングラーやアメリカンアングラーと呼ばれており、どちらもキアンコウ属です。

キアンコウ

太平洋北西部(日本、朝鮮半島など)の水深およそ500mまでの深海に生息。

クツアンコウ

インド洋~太平洋の全域、水深約500mまでの深海に生息。

アングラー

大西洋東岸、地中海、黒海の水深約1000mまでの深海に生息。

アメリカンアングラー

大西洋西岸の水深100mまでの海底に生息。

 

レシピ

鮟鱇の刺身

鮮度の良いアンコウの白身の刺身は淡泊で美味しく、肝醤油で食べると更に旨味が増す。

アンコウの刺身

 

鍋料理(どぶ汁など)

アンキモを溶かし込んだコクのある鍋料理、どぶ汁。

漁師料理が発端。

割下なぞ不使用で極上のスープが出来上がる。

その濃厚スープの旨さは、一度食べたらやみつきに。

アンコウのどぶ汁

 

アンコウの唐揚げ

鍋料理ばかりではなく、アンコウは唐揚げにしても美味しい。

唐揚げにして水分を飛ばし、肝をソースにして絡めれば、外はパリッと、衣の中はぷりっぷりのアンコウの白身とご対面。

アンコウの唐揚げ

 

アンコウ【鮟鱇】 グロい顔の海のフォアグラ。七つ道具で栄養満点 まとめ

グロテスクな姿形にも関わらず美味しいアンコウ。

淡泊な味の身とは逆に、がっつりとした濃厚な旨味が味わえる肝。

最近では手軽に「アンコウの七つ道具」セットも売られており、ご家庭でアンコウ鍋を楽しむこともできます。

肝が大きいもの、身肉が透明感のある淡いピンク色のものを選びましょう。

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