甘酒は、3~7世紀の古墳時代まで歴史を遡ることができる日本の伝統的な飲み物です。
江戸時代には、夏バテを防ぐための栄養ドリンクとして、庶民の間でも人気でした。
現在でも、「飲む点滴」と呼ばれるほど栄養面に優れており、便秘解消から高血圧対策まで、幅広い健康効果を発揮しています。
甘酒が健康に良い理由
江戸時代には、すでに健康に良いと認められていた甘酒は、豊富な栄養と高い吸収率を持つことで有名です。
含まれている栄養素をリストアップするだけでも、「ビタミンB1・B2・B6・葉酸・アミノ酸・ブドウ糖・オリゴ糖」などのラインナップが見られます。
甘酒の栄養素のラインナップは、じつは点滴に含まれるものと、ほぼ同じだと言われています。
また、高い吸収率から、飲むだけで点滴のように栄養を摂取できるとされています。
血管に針を通さずにすむうえに、甘くて美味しいという、有り難い「飲む点滴」です。
もちろん、完全に点滴の代用とすることはできませんが、夏バテ対策ていどなら甘酒で十分だと言われています。
つめたく冷やした甘酒で、栄養摂取をしてみましょう。
甘酒は2つに分類される
一言で甘酒といっても、原料と作り方によって2つのタイプに分類することができます。
1つ目は、日本酒の絞りカスである「酒粕(さけかす)」を原料にして作った「酒粕甘酒」です。
価格が安いうえに、現代なら酒屋さんや蔵元のネット通販で手軽に購入することができます。
最高級の大吟醸の酒粕を使った、贅沢な甘酒を作ることも夢ではありません。
しかし、日本酒作りの工程から生まれたものだけに、アルコールが含まれています。
絞りカスとはいえ、6~8%という、ビールと同じくらいのアルコール度数が残っているのです。
そのため、子どもに飲ませることはできませんし、運転前にも注意が必要です。
2つ目の甘酒は、米麹を原料にして作った「米麹甘酒」です。
市販のインスタント甘酒で、四角いお餅状のものに、お湯を注ぐだけで作れるものがありますね。
じつは、米麹をフリーズドライして作ったものなんです。
本格的な米麹は、作るのに手間がかかるため、酒粕よりも価格が高くなります。
しかし、アルコールは全く含まれていないので、誰でもどんな時でも楽しむことができます。
酒粕甘酒の健康効果
健康に良い甘酒ですが、タイプによって異なる健康効果を発揮します。
まずは、日本酒の絞りカスである、酒粕甘酒の効果についてチェックしてみましょう。
絞りカスだからと言ってバカにできないほどの、嬉しい効果を発揮してくれますよ。
レジスタントプロテインで便秘解消
酒粕を原料にした甘酒には、「レジスタントプロテイン」という成分が含まれています。
日本語に訳すると、「消化しにくいタンパク質」という意味になり、食物繊維に似た働きをするとされています。
腸内のコレステロールや脂肪分をくっつけながら、便を柔らかくするため、便秘解消が期待できるのです。
また、酒粕には、白米よりもたくさんの、不溶性食物繊維も含まれています。
さらに、レジスタントプロテインは、水溶性食物繊維に似た働きをするため、便秘解消にダブルの効果があるとされています。
甘酒を酒粕で手作りすると、100種類以上の酵素が含まれます。
豊富な酵素は、消化器官の働きを助けてくれるため、こちらも便秘解消にはプラスの要素となります。
便秘解消のための飲み方
酒粕を原料に甘酒を手作りする場合は、水300mlに対して、酒粕50gを加えましょう。
水と酒粕を入れた鍋を火にかけ、溶けるまでゆっくりと混ぜていきます。
砂糖の量は、甘さの好みに合わせて、適量加えていってください。
出来上がった甘酒を、1日に1回、3週間ほど飲み続けると、排便の回数と量が増えるというデータがあります。
便秘解消のために飲むのであれば、酒粕甘酒100mlに豆乳100mlを加えて、食物繊維の量をアップさせてみると、さらに効果的になります。
清酒酵母でぐっすり快眠効果
良い眠りというのは、時間だけではなく、質も大切です。
日本酒を絞ったあとの酒粕には、もれなく「清酒酵母」が含まれています。
最近の研究によって、清酒酵母には、質の良い睡眠をもたらす効果があることが分かってきました。
酒粕甘酒には、清酒酵母が豊富に含まれているため、適量を摂取すると睡眠の質がアップするという研究結果も出ています。
これは、ビールやウィスキーといった、他のアルコール飲料では得られない結果のようです。
眠りを深くする「アデノシン」という脳内物質を活性化させることができる、清酒酵母の働きによるものです。
また、酒粕甘酒で質の良い睡眠を得ることで、さまざまな健康効果を得ることができます。
浅い睡眠を繰り返すだけでは、疲れも残り、頭もよく働きませんね。
ノンレム睡眠をしっかりととることで、脳や身体の疲れをリフレッシュさせることができます。
また、眠っている間に、記憶を整理しやすくなりますし、免疫機能もアップします。
質の良い睡眠は、美容効果とも密接な関係があります。
例えば、成長ホルモンの分泌量アップです。
成長ホルモンは代謝を促すので、肌のすみずみまで必要な栄養素を届け、老廃物を排除してくれます。
睡眠不足は、美肌の大敵なので、ぐっすり快眠できることは大切です。
また、同じ理由で、クマの解消にも効果的です。
目の下にくっきりと刻まれたクマは、一目見ただけで、くたびれた印象を与えてしまいます。
クマの原因は、睡眠不足による、血行不良が考えられます。
滞ってしまった血流が、皮膚の薄い目の下に浮かび上がってきてしまっているんですね。
東京工科大学と某大手メーカーが1ヶ月の研究調査を行った結果、毎日甘酒を飲み続けていたグループは、明らかにクマが薄くなったという報告があります。
クマでお悩みの人は、酒粕甘酒を飲んで、睡眠の質を上げてみるのはいかがでしょうか。
さらに、質の良い睡眠で代謝がアップすることによって、体重も減りやすくなります。
ダイエットを計画している人は、挑戦してみてはいかがでしょうか。
甘酒自体に空腹感を抑える効果があるので、清酒酵母で快眠効果が得られる、酒粕甘酒なら効果は倍増かもしれませんね。
ただし、酒粕甘酒のカロリーは、100mlあたり72kcalです。
ビールは100mlで40kcal、コーラ100mlで46kcalと、他の飲み物と比べて高めなので、飲み過ぎには注意しましょう。
快眠効果のための飲み方
酒粕甘酒の快眠効果を、効率よく得るためには、就寝1~2時間前に飲むのがベストです。
このタイミングで飲んでおけば、ちょうど寝る時間に、甘酒の成分が吸収されることになります。
成分が身体に行き渡ったところで、ぐっすり眠りましょう。
量としては、コップ1杯分(200ml)でじゅうぶんです。
そのまま飲んでも良いですが、ミントなどの、リラックス効果が期待できるハーブ類を加えても良いですね。
風味も異なってくるので、同じ味に飽きたときにもおすすめです。
米麹甘酒の健康効果
米麹甘酒の健康効果は、酒粕以上に豊富にあります。
米麹からしか得られない成分が存在するためですね。
米麹を原料にした場合にのみ含まれる、「ペプチド」や「グルコシルセラミド」といった成分がもたらす効果をチェックしてみましょう。
ペプチドで血圧対策効果
血圧が上がる理由の一つに、ホルモンと酵素の結びつきによる変化があります。
血液の中に含まれるホルモンは、通常では、なんの問題も引き起こしません。
しかし、脂質や糖質のとりすぎによる肥満、塩分の過剰摂取、ストレスの蓄積などを引き金に、悪性のホルモンに変化してしまう可能性があります。
血中のホルモンが悪いものへと変化してしまうと、血管の収縮の促進をさせてしまうようになります。
また、余分な塩分を、体外に排出する働きも阻害してしまいます。
その結果、血圧が上がってしまうことになるのです。
米麹甘酒には、この悪いホルモンへの変化を抑制してくれる「ペプチド」という成分が含まれています。
薬のように、上がってしまった血圧を即座に下げてくれるものではありませんが、予防という意味では期待できるようです。
食生活や生活習慣を見直しながら、米麹甘酒でペプチドを摂取していってみましょう。
個人差はみられますが、適切な生活を送り、甘酒を飲んでいれば3ヶ月~半年ほどで改善する可能性があると言われています。
ただし、血圧対策効果が見込めるからといって、米麹のペプチドだけに頼りすぎずないようにしてくださいね。
血圧対策効果のための飲み方
血圧対策効果のために甘酒を飲む場合は、朝がおすすめです。
血圧をあげてしまう悪いホルモンは、朝に活発になるためです。
また、米麹甘酒に含まれている消化酵素などは、熱に弱いという特徴があります。
そのため、ホットよりも冷やした状態で飲むほうが効果的と言われています。
身体を温めることを考えたいのであれば、常温の甘酒に、皮ごと擦りおろしたショウガを加えてみましょう。
ショウガの皮に含まれたジンゲロンという成分が、血流を促進し、血圧を下げる効果もサポートします。
さらに、利尿作用も期待できるので、尿から塩分を排出しやすくなります。
150mlの甘酒に対して、皮ごと擦りおろしたショウガを、小さじ0.5杯ほど加えて飲んでみましょう。
また、高血圧による心筋梗塞が心配な方は、甘酒100mlにヨーグルト100gを加えたヨーグルト甘酒もおすすめです。
グルコシルセラミドで便秘解消効果
米麹甘酒には、原料の麹に「グルコシルセラミド」という成分が含まれています。
こちらは、腸内で善玉菌を増やす効果を持つものです。
「グルコシルセラミド」自体は、他の食べ物にも含まれていますが、大半は小腸で吸収されてしまうため、便秘解消には繋がりません。
しかし、麹に含まれるものだけは、大腸まで届くため有効だというのです。
また、米麹自体が善玉菌であることに加え、甘酒の栄養素であるオリゴ糖は、善玉菌のエサとなってくれます。
甘酒を飲むことで、外部から善玉菌を届け、さらに腸内で繁殖しやすい環境を整えることができます。
便秘解消のための飲み方
米麹甘酒を便秘解消のために飲むのであれば、150mlの量を、2週間ほど続けてみましょう。
米麹の甘酒で、排便の回数が増えたというデータがあります。
さらに、効果をアップさせたいのであれば、少量のきな粉や、黒ごまをすったものを加えても良いですね。
香ばしい風味が加わるので、違った美味しさも楽しめます。
善玉菌で免疫力アップ
米麹甘酒は麹自体が善玉菌であるうえに、腸内でも増えやすい環境を整えることは、すでに述べましたね。
善玉菌の量が腸内で増えるということは、身体の免疫機能も向上することも意味します。
人間の免疫細胞の約6割は、腸に集中しています。
また、腸内に存在できる善玉菌の数も、決まっているのです。
甘酒の効果で、善玉菌の割合が増えると、免疫細胞も活性化しやすくなるというメリットが生じます。
免疫力アップのための飲み方
免疫力アップを目指して甘酒を飲むのなら、1週間は続けて飲むようにしましょう。
量としては、150mlほどあれば十分です。
毎日飲むことで、腸内環境が整えられていきます。
善玉菌で美肌効果
善玉菌が豊富な腸内環境を整えることで、美肌効果も期待できるようになります。
肌荒れや老化の原因である活性酸素は、悪玉菌によって生成されるものです。
善玉菌の割合が増えると、全体的な活性酸素の量を減らすことができるため、アンチエイジングにつながるのです。
また、甘酒には、コラーゲンの生成を促す豊富なビタミンB群や、メラニン生成を抑制するコウジ酸という成分も含まれています。
さらに、イライラを抑制するとされるGABAも含まれているため、ストレスによる肌荒れにも強くなると考えられています。
甘酒には、美肌を作るための成分が、これでもかと詰め込まれているんですね。
美肌効果のための飲み方
美肌効果を期待するのであれば、1回に50~150mlていど、1日200ml以内に抑えて飲みましょう。
肌に有効な成分が多いからといって飲み過ぎは禁物です。
朝に飲むようにすると、代謝もアップするので、ダイエット効果も期待できます。
おすすめのアレンジレシピは、甘酒100mlに、豆乳100mlとバナナ1/2本とレモン汁を少々加えたものです。
美肌に不可欠なビタミンCや、肌細胞の修復をしてくれるビタミンB群を豊富にとることができます。
また、抹茶甘酒にすることで、味も美肌効果もアップします。抹茶には、活性酸素を除去するカテキンや、肌のバリア機能を高めて老化を防止するビタミンE、肌のうるおいを保つビタミンAなどが含まれています。
甘酒100mlに、小さじ2杯の抹茶をお湯で溶いたものを加えましょう。
よく混ぜると、ほろ苦さが加わって、大人の味わいになります。
夏バテ・熱中症対策効果
江戸時代に、夏バテ防止用の飲み物として、庶民に愛されてきた甘酒。
政府が、庶民が購入しやすい値段になるよう、決まりを作るほど健康に良いものだと認識されていました。
点滴に近い栄養素から、夏バテに効果があるのはもちろんのこと、熱中症の予防にも効果があるとされています。
じつは、甘酒には、100mlに60mgものナトリウムも含まれています。
熱中症を予防するためには、ナトリウムが含まれている飲み物を摂取することが推奨されています。
甘酒は、水分とナトリウムのバランスが良いため、定期的に飲んでいると、熱中症の予防にもなると言われています。
甘酒の種類と7つの効能 まとめ
はるか昔から、日本人の健康を守ってきた甘酒の効果は、現代の研究で根拠が明らかにされるようになりました。
原料が酒粕か米麹かで、含まれる成分と発揮する効果に多少の違いはありますが、健康に良いことだけは共通しています。
ただし、カロリーや糖分も、それなりに高いので飲み過ぎには注意です。
適切な量で、毎日を健康的に過ごしていきましょう。
糖分を気にせず、気軽に甘酒の効果を実感するにはサプリメントをつかうのも良い方法です。