英語で「シックス・センス(sixth sense)」とも言われる第六感、人間に備わっている五感を超えた超常的な感覚として知られていますね。
虫の知らせや直感など、遥か昔から存在が仄めかされてきましたが、実在することを証明する術はありませんでした。
しかし、脳の最新研究により、第六感の謎が解き明かされようとしています。
第六感とは何か
第六感とは、「味覚・触覚・嗅覚・視覚・聴覚」といった、人間が備えている五つの感覚以外の感覚です。
定義によっては、感覚を超えるものとされている場合もあります。
では、具体的に、どのようなものが第六感とされているのかを見てみましょう。
優れた直感を意味する
まずは、第六感を、優れた直感やインスピレーションとするものです。
直感とは、論理的に思考した結果ではなく、感覚的に物事を判断することです。
なんとなくで選んだことが、よい結果を引き当てるというものですね。
インスピレーションの場合は、瞬間的に良い案が思い浮かぶことを意味します。
大げさな表現だと「神が降りてきた!」というような表現をすることがありますね。
思い悩んでいたことに対する答えが、神の啓示のごとく現れるので、そんな表現がされるのかもしれません。
ESP能力を意味する
第六感は、直感やインスピレーションよりも、より超感覚的な知覚として捉えられることもあります。
ESP能力や超能力とも言われる力のことですね。
とくに、知るはずのない未来の出来事を読み取ってしまう予知能力に対して使われることが多いようです。
預言者と呼ばれるほどの力でないにしても「なんとなく来客があるような気がした」「電話に出る前に、誰からのものか分かった」「虫の知らせがあって、外出をとりやめたら、乗るはずだった電車が事故った」のような小さなことも該当します。
人によっては、テレパシー能力があるため、異変を察知することができるのだと解釈されることもあります。
動物の場合だと、地震の前にナマズが暴れる、吠えない犬が急に吠えるなどといった予知能力が指摘されます。
動物の持つ本能が、危険を予知するのに役だっているという説です。
動物よりも生命の危険にさらされることのない人間の場合、本能が後退してしまっているのかもしれませんね。
第六感を磨けば、同様のことができるようになるのではないでしょうか。
霊感を意味する
人間の持つ第六感は、霊感のことだと解釈されることもあります。
なかでも有名なのが、ブルース・ウィリス主演の映画『シックス・センス』です。
死者の姿が見える少年と、小児精神科医の交流を描いた作品であることから「霊が見えること=第六感」という解釈がなされていることが分かりますね。
こちらの映画をきっかけに、霊感の意味で捉える人が増えたとも言われています。
ただし、人によっては、五感の次の能力ではなく、第七感あたりに該当するのではと主張されることもあります。
仏教における「意識」を意味する
第六感は、しばしば仏教における「意識」と同一視、または類似したものとして捉えられることがあります。
仏教における「意識」は、簡単に言えば、精神の働きを意味します。
人間の五感に該当するものとして「眼識・耳識・鼻識・舌識・身識」という「五識」がありますが、これらのものは「意識」があるからこそ成り立っているのだと考えられています。
物が見えるのも、音が聞こえるのも、すべて第六感に該当する「意識」があるからこそだというのです。
身体と精神の間に存在し、それぞれを繋ぐ役割を果たすものだと考えることができます。
また、「五識」は現在の事象だけを対象としますが、「意識」は現在だけでなく、過去や未来にも作用するとされています。
仏教においては、「意識」のうえにも、第七感ともいえる「末那識(まなしき)」と、第八感ともいえる「阿頼耶識(あらやしき)」があると考える宗派もあります。
一般人にはたどり着くことが難しい、より高次元なものです。
ちなみに、お釈迦様が得たという「悟り」は、阿頼耶識のさらに先にあるとされているようです。
第六感の強さには性差がある
第六感の強さには、性差があると言われています。
男女で比較すると、どちらかといえば、女性のほうが優れていると考えられているのです。
そういえば、「女の感」という言葉はよく使いますが、「男の感」というのは、なかなか聞きませんね。
男の浮気は、女の感で見抜かれる確率が高いとされています。
女性が男性より、第六感が強いとされる理由には、太古の生活が関係しているようです。
まだ人間が洞窟で狩りをしながら暮らしていた時代、獲物を探して遠くまで出かける男たちの安否を気にするうちに、異変を察知する力が養われたという説があります。
また、力では男性に劣るため、身を守るために、危険を察知する力が磨かれたとも言われます。
古今東西、女性は髪を長く伸ばす傾向にあることも関係します。
じつは、第六感を働かせるために、髪は非常に重要な役割を果たします。
長い髪の毛は、アンテナのように、より鋭く感覚を受け取るために役立ちます。
どうりで、霊能者やシャーマンといった人たちは、長髪のイメージが強いわけですね。
長い髪の女性は、鋭い第六感を有しているようです。
第六感の正体とは
直感であったり、超能力であったり、霊感であったり、第六感はさまざまな解釈をされています。
しかし、その正体は超常的なものではなく、それなりの根拠に裏付けられた現実的なものだと考えられているようです。
主に、「電磁波などを感知する力」、「蓄積された経験則に基づく判断力」、「隠された身体的感覚の力」だという説に分かれています。
磁気などを感知する力
第六感の正体の一つ目は、地磁気や電磁波、超音波といったものを感知する力だというものです。
目には見えないので、気づきにくいものなのですが、その存在自体は、科学的にも証明されていますね。
第六感が強い人は、これらのものを感知するセンサーが、他の人よりも発達しているのだと考えられています。
動物で言えば、サメやナマズなどの魚類は、生き物の身体から発せられる弱い電気を感知する能力が備わっています。
サメは、視覚のかわりに、電気の感知能力を用いて獲物を探すというのです。
地震の前にはナマズが暴れるという話も、その感知能力から、電磁波や地磁気の乱れを察知しているためだと言われています。
また、タンパク質の研究においては、生物の網膜には「クリプトクロム」という特殊なタンパク質が存在していることが明らかになってきました。
主に光を感知する働きを持ちますが、驚くことに磁場を受信するセンサーとしても働くということも分かりました。
人間の網膜にも存在し、磁場を感知する実験も成功しています。
不思議なものをよく見たりする人は、こちらのタンパク質の働きが、人よりも優れているのかもしれません。
クリプトクロムが察知する磁気が、第六感の正体ということなんですね。
蓄積された経験則に基づく判断力
第六感の正体の二つ目は、蓄積された経験則に基づく、判断力だとするものです。
例えば、腕の良い職人は、一瞥するだけで、品質の良し悪しが分かると言われています。
この品質にたいする直感は、長い職人生活のなかで蓄積された経験則と、目の前のものを、瞬時に比較したことから得られるものだというのです。
一つの仕事を長く続けていると、どんどん手際がよくなるように、繰り返し続けることで直感力も磨かれていくのかもしれませんね。
アメリカの有名なジャーナリストであり、ベストセラー作家でもある、マルコム・グラッドウェルは、10,000時間の練習を重ねれば直感による判断力を磨くことが可能だと主張しています。
蓄積された情報のかたまりをもとに予測をたて、他の人よりも、すばやく正確な判断を下せるようになるというのです。
隠された身体的感覚の力
私たちが知っている人間の身体的な感覚は、五感だけですね。
しかし、身体の構造に対する研究が進んだ現在では、じつに9種類もの感覚が備わっているとされています。
研究者によっては、細かく分類すれば20種類以上にも及ぶと主張する人もいます。
それぞれの感覚の名称を、詳しく挙げてみると「体性感覚・表在感覚・深部感覚・皮質性感覚・内蔵感覚・平衡感覚」といったものが見られます。
はっきりと知覚することができる五感とは異なり、生活するうえで、どのような役割を果たすのかがハッキリとしない感覚ばかりですね。
自覚することが少ないため、たまたま、意識にひっかかる感覚があったときに、第六感として捉えられた可能性があります。
20種類以上もの、漠然とした知覚の集大成が、第六感だと考えられています。
第六感の正体に関する研究
第六感の正体に関しては、数多くの研究がなされてきました。
超常的な力とされるものを、科学的に解き明かしていこうとする試みには、いろいろなものがあります。
代表的なものとして、オーストラリアのメルボルン大学の研究や神経科学者による研究、日本の理化学研究所の研究をご紹介します。
オーストラリア・メルボルン大学における研究
オーストラリア・メルボルン大学の心理学科で行われた研究は、写真を利用して、変化を察知するか否かを確かめるものでした。
概要だけでは、第六感との関連性がよく分かりませんが、被写体に生じた微妙な変化を感覚的に認識しているのかを調査する狙いがありました。
具体的には、女性の写真を1.5秒間眺めてもらったあと、1秒の間隔をあけて、再び同じ写真を眺めてもらうという実験を繰り返したものです。
実験に使用された写真のなかの数枚に、髪型やファッションなどに微妙な変化を加えたものを混ぜることで、変化を察知したのかを答えてもらったのです。
実験の結果、どの部分が異なるのかを言い当てることができなくても、生じた変化を感じ取れることが分かりました。
そして、この「何かが違う」という感覚を得ることこそが、第六感の正体である可能性が高いと結論づけられました。
研究を行った博士は、人間の脳が、短時間に大量の情報を処理したときの感覚を、予知や予感といった現象と勘違いしているのだと説明しています。
神経科学者による研究
同様の研究を行っていた脳科学者は、人間は無意識のうちに大量の情報を記憶していると語っています。
例えば、人間は、他人の作り笑いをあるていど見分けることが可能です。
見分けられることの根本的な理由は、蓄積した記憶のなかに、「作り笑い」に関する情報があるためだとされています。
視覚から得られる情報だけでなく、聴覚や嗅覚など、無意識下で記憶していることは多岐にわたります。
しかも、ただ蓄積するだけでなく、ふとしたきっかけに呼び覚まされ、無意識のうちに照合することもあります。
照合の結果、得られた感覚が、第六感だというのです。
人間は、経験を重ねて情報を蓄積すればするほど、直感を働かせることができるようになるということですね。
人間の脳は、技術が発達した、現代のスーパーコンピューター以上の情報処理能力を有しています。
脳の力を活用すれば、第六感を得ることも不可能ではなさそうです。
日本・理化学研究所における研究
また、日本の理化学研究所が、富士通との合同プロジェクトで行った研究も第六感の正体について興味深い結果を残しています。
研究内容自体は、将棋のプロ棋士の直感力を、脳科学的に捉えるという趣旨のものでした。
ここでは、MRI装置を利用して、棋士の脳活動を測定しています。
プロ棋士とアマチュア棋士の脳の動きを比べることで、直感力のありかをつきとめようとしたのです。
測定の結果、プロ棋士の脳からは、アマチュア棋士では見られなかった領域での活動が特定されました。
1つ目の領域は、大脳皮質頭頂葉の「楔前部(けつぜんぶ)」と呼ばれる部分です。
こちらは将棋盤面の駒組みを、瞬時に認識するという活動を行うと結論づけられました。
2つ目の領域は、大脳基底核にある「尾状核(びじょうかく)」と呼ばれる部分です。
楔前部が活動した0.01秒後に、大きな活動を見せたことから、直感が発生しているのだと結論づけられました。
つまり、人間の直感は、大脳基底核の「尾状核」が生み出しているのです。
じつは、アメリカの脳科学者の研究においても、尾状核は直感の発生源として注目されていました。
尾状核は、脳内に蓄積された情報が集中する場所であり、莫大な情報の中から瞬時に最適解を導き出しているのだと考えられています。
情報の中から最適解を見つける活動こそが、第六感の正体だということですね。
第六感は育てることができる
脳の中で発生する直感を、第六感の正体とするのであれば、トレーニングで育てることも可能だと考えられています。
意図的に育てることで、予知やテレパシーといった超能力を発揮できるかもしれませんね。
いくつかのトレーニング法を紹介したいと思います。
五感を研ぎ澄ませるためのトレーニング法
まずは、第六感を育てる前の段階で行っておきたいトレーニング法です。
第六感は、五感から得た情報をもとに発揮されると考えられています。
つまり、五感を研ぎ澄ませることで、第六感を働かせやすくするのです。
いわばウォーミングアップのようなものですね。
視覚を研ぎ澄ませるためには、周囲の風景の色を意識すると良いでしょう。
味覚は、料理を味わうこと、嗅覚は香りを意識していくことが大切です。
また、聴覚は音楽だけでなく、生活音も気にすることが大切です。
触覚は、肌触りの良いものの感触などに意識を傾けるようにします。
いずれも、通常の生活ではスルーされることが多いものばかりですね。
注意を向けて、五感を研ぎ澄ませていきましょう。
精神を研ぎ澄ませるためのトレーニング法
第六感を育てる前に、神経を研ぎ澄ませるためのトレーニングも行いましょう。
生まれた直感を受け止めるための、アンテナの性能を伸ばすようなものだと考えてください。
手軽にできるのは、自分の心に語りかけるというトレーニングです。
「自分が望むものは何か」「何を目標とするのか」「理想の自分像とは何か」など、思いつくことを次々と語りかけていきましょう。
こうすることで、語りかけから生じる、心の答えを受け止めていくのです。
何度も繰り返すうちに、アンテナの性能が向上していくので、継続的におこなうようにしてください。
カードを使ったトレーニング法
第六感を育てるためのトレーニング法は、いろいろありますが、まずは一人でも行えるものを紹介します。
カードを使った方法ですが、ESP実験で使用されるような「◯・□・☆」のような柄のついた、ゼナー・カードでなくてもかまいません。
どこでも手に入れられる、ゲーム用のトランプで十分です。
カードを伏せた状態で、次々に数や柄を当てていくだけでOKです。
手順としては、難易度が低い、柄を当てるトレーニングから始めましょう。
トランプの柄は4つしかないので、比較的スムーズに当てていくことができます。
柄を当てるトレーニングに慣れたら、数を当てるトレーニングに移行していきます。
最終的には、柄と数の両方を当てるトレーニングを行いましょう。
ポイントは、じっくり考えるのではなく、スピーディーにパッパッと当てていくことです。
0.1秒~0.3秒の間に、カードをめくり、即答していくと良いでしょう。
人間の脳は、これだけの短時間に、直感を発生させています。
クイズを出し合うトレーニング法
こちらは、二人以上の人数が必要なトレーニング法です。
手順はシンプルで、互いにクイズを出し合い、即効で答えるというものです。
クイズの内容は、複雑なものではなく、「私の今朝の朝食は?」のような、直感で答えられるものでOKです。
単純ですが、実際に超能力者として知られている人たちも取り入れているトレーニング法だったりします。
カードを使っての方法同様、答えを考える時間をとらず、スピーディーに答えていくことが大切です。
第六感の正体|超能力を得るためのトレーニング方法 まとめ
ジークンドーの創始者であるブルース・リーは、主演した映画『燃えよドラゴン』で、「考えるな、感じろ!」という名言を残しています。
また、映画『スターウォーズ』でも、偉大なマスター・ヨーダが、同じセリフを口にしていますね。
架空の世界のものですが、第六感を育てるためには、真理となる言葉なのかもしれません。
人間の脳の情報処理能力が関係する第六感を、考えずに感じてみましょう。