これまで両親が酒豪だったからその子も酒豪になるとか、酒癖は遺伝によるものと考えられてきました。
しかし、その根拠は、生活習慣によるものがあるとしても遺伝子によるものとは、思いもよりませんでした。
インペリアル・カレッジ・ロンドンとキングス・カレッジ・ロンドンが率いる国際研究プロジェクトの調査で、AUTS2と呼ばれる遺伝子がアルコールの消費量に影響していることが判明したというのです。
AUTS2遺伝子
AUTS2遺伝子が注目されたのは、2002年に自閉症の患者でAUTS2遺伝子の異常が見つかり、その後、統合失調症や注意欠陥多動性障害(ADHD)、知的障害、薬物依存などのさまざまな精神疾患に関わっていることがわかってきました。
この遺伝子が作りだすタンパク質は神経細胞の核に存在するとこれまで考えられてきましたが、その働きはわかっておらず、この遺伝子の異常がどのように各種の精神疾患を引き起こすのかは、未だ全てが解き明かされておらず、謎の多い遺伝子として精神医学界で注目の的となっています。
AUTS2遺伝子が酒癖に関与している!?
AUTS2遺伝子の働きはまだ解明されていませんが、欲求や快楽に関する刺激に反応する脳の「報酬系」において最も活発な遺伝子であるとされています。
今回の研究調査によると珍しいタイプのAUTS2遺伝子を持っている人は、よくあるタイプを持っている人と比べてアルコール消費量が5パーセント低かったという結果がでたというのです。
つまり、アルコールが飲みたいという欲求をこのAUTS2遺伝子が制御している可能性があるということなのです。
今回、国際研究プロジェクトの調査で研究チームは、被験者2万6000人のDNAサンプルを分析してアルコールの消費量に影響する遺伝子を探し、さらにこの調査結果を2万1000人の被験者を使ったもう一つの調査結果と照らし合わせました。
その上で、AUTS2遺伝子から情報を読み取りたんぱく質を生成するためのメッセンジャーRNAと呼ばれる物質が脳内にどれだけ存在しているかを調べたところ、低いアルコール消費量と関連する遺伝子タイプを持つ人の脳でより多くのメッセンジャーRNAが生成されていたことがわかりました。
つまり、AUTS2遺伝子は、アルコール消費量が低い人の脳で活発に活動しているといえる結果となったのです。
飲酒の習慣
飲酒の習慣は、特定の食べ物を見ると飲みたくなる、楽しかった記憶を元に再び飲みたくなるなど潜在意識での記憶による飲酒の欲求や嫌な事を忘れるための飲酒など人により様々ですが、今回AUTS2遺伝子が飲酒習慣に関係していることが分かったことで、飲酒という行為の生物学的根拠をより深く理解することができ、研究チームのガンター・シューマン教授は、アルコールの乱用や依存症の一人一人に合った予防法や治療法を開拓するための重要な一歩となったと話しています。
飲酒習慣に関わる遺伝子を発見!まとめ
今回の研究でAUTS2遺伝子が飲酒の習慣に関係していることはわかったものの、酒癖までもが遺伝子のせいだとするのは少々早すぎた結論ではないでしょうか。
遺伝子が飲酒習慣に関わりがあることはわかりましたが、なんとなく男女で飲める量が違うような気がするのは私だけでしょうか?
なんと、男女間にもアルコールを分解する能力の違いがありました。
→男性と女性お酒が強いのはどっち?~酒豪を決めるアルコール遺伝子と男女での影響の違い~