「視線を感じる」
あなたは、誰かに見られていると感じたことはないでしょうか。
何気ない日常なのになぜか視線を感じて振り返ると誰も見ていなかった。
もしかして幽霊?
こんなことがある私はおかしいの?
霊感はないはずなのに。
視線恐怖症の方にもぜひ読んでいただきたいと思います。
あの感覚は、あの心理はいったい何なのでしょうか。
この奇妙な感覚についてオーストラリアの心理学者が研究を行い、原因を解明したというのです。
視線認識能力は当然のこと
今回、シドニー大学のコリン・クリフォード教授率いる研究チームが、被験者たちの周囲に複数の人を配置して彼らの視線を感じるかどうか聞くという調査を行いました。
通常、自分が誰かから見られていると認識するには、他人の目のポジションと頭の方向を確認し、その視覚情報をもとに脳は空間的に視線のポジションを計算をします。
しかし、その誰かはサングラスをかけて視線を確認できなくしているかもしれないし、また明かりの無い暗い場所では視線を確認できません。
視線が確認できないにも関わらず、調査の結果は「なんとなく視線を感じる」と回答した人が多かったのです。
また、研究チームは視線がはっきりと判別できないよう工夫した顔の画像を作り、目がどこを向いているのかを被験者たちに聞いてみるといった調査もしてみました。
これもまた「自分たちを見つめている」と被験者たちは答えるという結果になりました。
周囲に他人がいると、実際に見られているかどうかに関わらず、人は見られている感覚に陥りやすいことが明らかになりました。
シドニー大学のコリン・クリフォード(Colin Clifford)教授は、それをやむを得ない事だといいます。
人が何かの違和感を感じると、たとえ視線が確認できなくても脳は「誰かが自分を見つめている」と誤認し、自分が見られているという心理が働くというのです。
しかし、他人の視線を感じるという判断能力は、実はそんなに単純なものではありません。
脳は、無意識の内にたくさんの情報を処理しているのですから。
そして、こういった私たちの脳内回路は、私たち人類の進化に起因すると言うのです。
防衛反応
コリン・クリフォード教授によると、「自然界において直視されるという事は、支配や威嚇を表し、敵や獲物として攻撃を受ける可能性を意味しています。ですからその合図を見逃すと自分の身を守れないため命取りになります。そこで私たちの脳は、視線の確信がとれないにも関わらず見られている感覚に陥り、周囲の脅威から自身を守ろうと働くとこが誤認の原因だと考えられます。」というのです。
つまり、視線を感じる感覚は、脳の防衛反応なのだということです。
「見られている」と思い込んだほうが、気づかないよりも安全と脳が判断しているのです。
コミュニケーションをとるための準備
視線による直視というのは、コミュニケーションをとる上でも用いられます。
人は、周囲からの視線を感じたとき、必ずしも身に危険が迫っていると判断するわけではなく、ときにはその状況を好意的に受け止めることもあるのです。
「誰か」はわからないが、想いを寄せる異性に「見られているかも」と感じることで、心がドキドキ、ワクワクしたことはないでしょうか?
不確かな視線は、これから起こりうるコミュニケーションのための心の準備を脳が無意識にしていることもあるのです。
また、直視の傾向は言葉を発せないために何らかの方法でコミュニケーションを取ろうとする赤ちゃんにも見られる傾向で、動物が持つ先天性のものだとも考えられています。
私たち大人になっても直視は社会においてコミュニケーションを取りたいということを示すこともあるので、この場合も素早く気づけた方が社会的に上手くいくといえるでしょう。
誰かの視線が気になる!|他人に見られているという心理は脳の誤認だった まとめ
視線恐怖症の方も安心してください。
他の誰か視線を感じて不安になることがよくありましたが、脳が発する防衛反応やコミュニケーションのための準備ということを知り私も一安心しました。
他人に見られている心理というのは、現実では「誰からも見られていない」こともよくあるので、みなさんも気にしすぎて気疲れしないでくださいね。
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