激辛料理はお好きでしょうか。
自分はそれほどではなくても、激辛好きの知人や友人の顔を思い浮かべられるかもしれません。
1980年代後半に巻き起こった激辛ブーム!
当時は、キムチや明太子が飛ぶように売れ、スナック菓子でもキムチや明太子味のうまい棒や激辛スナックカラムーチョなどが登場しました。
また、辛いものの代表格ともいえるカレーでは、辛さを選べる店が増え、激辛カレーをどれくらいのレベルまで食べることができるかというような自慢があったほどの人気でした。
最近では、この激辛ブームも第二章に突入しており、激辛カレーのみならず、激辛ラーメン、激辛チャーハン、激辛カップラーメン、激辛麻婆豆腐、四川火鍋など種類も豊富です。
辛さはさらにエスカレートし、激辛ソースで有名なブレアーズのデスソースやサドンデスソースを店頭に並べているスーパーマーケットも多くなり、京都祇園では最強一味唐辛子なる激辛スパイスが売れています。
特にブレアーズのサドンデスソースの辛さは10万スコビル!(辛さの値)
タバスコの40倍というとんでもない辛さです!
また、異物混入問題から復活したペヤングも通常のソース焼きそばのほかに激辛ぺヤングや激辛カレー味も発売され、辛さ1400スコビルという「すこびる辛麺」など超激辛ブームへと突入しています。
年々激辛マニアも増え、激辛ブログにも注目が集まっています。
しかし、辛さを感じる神経系は、実は痛みを感じる神経系と同じだということを聞いて驚かれるかもしれません。
辛さを感じるのは痛覚
通常、味は主に舌にある味蕾と呼ばれる組織で感じるものなのですが、この辛さだけは味覚の中では唯一、痛覚で感じるのです。
つまり、辛味は脳へは痛みとして伝達されていることになります。
激辛が好きな人は、痛みが好きだということになるわけですが、これはいったいどういうメカニズムでそうなっているのでしょうか。
痛みは状況によって感じ方が変わる
ノルウェーのオスロ大学のシリ・レクネス教授が面白い実験を行なっています。
この実験は辛味ではなく温度によるものですが、熱さを感じる神経も同じ痛覚ですので参考になるでしょう。
教授は被験者たちに3種類の温度を体験してもらうことにしました。
全く熱くない温度を低温、熱いには熱いが耐えられる程度の温度を中温、熱くて耐えられないくらいの温度を高温とし、この3種類の温度を比較体験してもらったわけです。
もちろん実験ですから、体験する順序には意図があります。
ステップ1
最初のステップでは、低温と中温を比較してもらいました。
すると被験者たちは一様に中温のほうについて、ある程度の熱と痛みを感じると回答しました。
低温については特に熱も痛みも感じなかったと回答しています。
ごく普通の回答です。
ステップ2
次のステップで、今度は中温と高温を比較してもらいました。
その結果、被験者たちは高温について熱も痛みも強く感じたと回答しました。
そしてなんとも不思議なことに中温については、あまり熱くもなく痛くもなく適度だったと回答したのです。
中温の評価が変わっていることに注目できます。
最初のステップでは、ある程度の熱と痛みを感じると述べていた被験者たちが、次のステップではあまり熱くもなく痛くもなく適度だったと回答しているのです。
全く同じ温度について、かなり異なる感じ方をしたことがわかります。
このような結果からレクネス教授は結論として、痛みはその時の状況や本人の予測によって感じ方が変わるものだということが明らかになったと述べています。
この実験では、選択肢の中で中温が最も熱いものだった時には、痛みを感じそれを不快に思っていたものの、さらに熱い選択肢との比較では中温を心地よい温度とさえ感じているのです。
痛みが快感に変わる脳内麻薬
この現象は、比べる対照が自分の経験や想像であっても当てはまるとのことです。
つまり無意識のうちに、予想の痛みと現実の痛みを比較して受け止め方を変えているということになります。
当然、人によって感じ方は大きく異なり、ある種の痛みを快感ととらえる人もいるのです。
この実験から、熱い風呂が好きな人や激辛を好む人がいるのもうなずけますが、実はもうひとつ挙げたいことがあります。
神経系を通して脳に強い痛みが伝わると、脳はその痛みから体を守るために脳内麻薬とも呼ばれるエンドルフィンを分泌することがあります。
そうなると、本当は痛いのですがそれが快感として感じられることになります。
そしてやめられなくなってしまうのです。
激辛は痛覚で感じる!~やみつきの理由は脳内麻薬だった~まとめ
もっとも、適量の辛い料理は代謝を高め、食欲を増進し、ダイエットにも冷え性の改善にも効果があるようですから、辛い物が駄目だということではありません。
感じ方は人それぞれですし、無理をしなければよいのではないでしょうか。
サドンデスソースには注意してくださいね。