ハロウィンイベントといえばコスプレですよね。
東京ディズニーリゾートをはじめ、毎年恒例の原宿表参道ハローハロウィーンパレード、六本木ヒルズハロウィンパレード、さらにはお台場やスカイツリーまでハロウィンで一色になります!
これらハロウィンイベントは、年々参加者が増え、3000人程度の中規模なものから10万人にもおよぶ動員数のイベントもあります。
ハロウィンコスプレとして昔は子供たちがドラキュラなどの衣装を着て回っていたのですが、近年ではゾンビが大ブーム!
パレードでもゾンビナースは大人の女性に人気の定番となっています。
しかし、これほどメジャーなモンスターとして知られるゾンビの起源を知っている方は多くないでしょう。
ゾンビの起源
ゾンビは、ハイチや西アフリカで信仰されているヴォドゥン(ブードゥー教)に古くから伝えられる「生ける死体」のことで、元はコンゴで信仰されている神「ンザンビ」に由来するといわれています。
目に見えないもの、不思議な力を持つものは、人や動物すべてンザンビと呼んだそうです。
これがコンゴの奴隷たちによってアメリカなどに伝わる過程でゾンビへと変化したとされています。
世界に広まるゾンビ
ゾンビは、死体がよみがえって動き出すという「生ける死体」として伝わっていましたが、死んでいるのでしょうか?生きているのでしょうか?
このゾンビの生死の問題は推測とされてはいますが、おおむね解明されており、正確には死者ではなく「仮死状態にある者」なのです。
このように本来伝わっているゾンビは、死の直前、もしくは仮死状態になっている人間の精神を破壊した状態でよみがえらせ、意思を持たない奴隷として術者が使用するというものでした。
仮死状態、つまりゾンビを造ることのできる状態は、人が感電した場合や水におぼれた時、凍死寸前の時などがあてはまります。
ブードゥー教を信仰する地域では、人が死ぬとその家族は死体がゾンビにならないように埋葬後36時間見張る風習があるそうです。
さて、このゾンビが世に知れ渡ったのは、映画に登場してからです。
ゾンビが最初に映画に登場したのは、1932年の映画「ホワイトゾンビ」(当時のタイトルは「恐怖城」)と古く、この映画に登場するゾンビは、
ゾンビパウダーにより仮死状態にされた人間を指し、ゾンビマスターといわれる命令者の命令に忠実に従い労働するという、ゾンビの起源に近い描かれ方でした。
この後もゾンビ映画は数多く作られましたが、主役はあくまで魔道士で、ゾンビは主人に従う脇役といった扱いでした。
また、吸血鬼など他のモンスターに従う奴隷のような存在として、墓の下からゾンビが登場します。
こうしてゾンビは世に知られることになりましたが、あくまで脇役でした。
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
それまで脇役だったゾンビを一躍主役の座にのし上げ、今のゾンビのイメージを決定づけたのは、1968年にアメリカのジョージ・A・ロメロ監督によるホラー映画「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」での登場です。
この作品でジョージ・A・ロメロはブードゥー教に古くから伝わる奴隷のようなゾンビの存在に吸血鬼の要素を取り入れて「生ける死体」というイメージを築き上げました。
ジョージ・A・ロメロのゾンビの特徴
死んでからよみがえった死体
人間の肉を食う
ゾンビに噛み付かれると噛まれた人間もゾンビになる
体は腐敗しているが、死んでいるので疲れを知らない
動きが遅く、1体のゾンビなら人間でも倒せるが、疲れや痛みを知らない集団のゾンビは恐ろしい
これ以降に作られた映画やゲームに登場するゾンビは、このナイト・オブ・ザ・リビングデッドによるもので、これが映画を通じて世界に広まり現在のゾンビのイメージが定着したのです。
ナイト・オブ・ザ・リビングデッド以降、人間もゾンビ化するという設定が追加されたため、家族がゾンビ化するというような葛藤や、増殖するゾンビの中、生き延びる人間というような作品が多く残されました。
マイケル・ジャクソンのスリラーのMTVでは華麗に踊るゾンビ軍団が登場しましたね。
ゾンビ対策
カナダの議会でパット・マーティン議員がゾンビ襲来時の対策について質問したというのはニュースにもなりましたが、ゾンビを増殖させないための国際的なゾンビ戦略をマニュアル化しているサイトもあります。
防災キットやシュミレーション計画などは通常の災害時と同じですが、「車の燃料は常に半分以上は満たしておく」とか「地元以外の連絡先を用意する」といったマニュアルはゾンビ対策といえるかもしれません。
また、アメリカ戦略軍の訓練テンプレートには2011年より「CONOP8888」という世界中でゾンビ化が止まらず、人間がゾンビに襲われるという仮想シナリオでの軍事作戦が導入されています。
これは、ゾンビを仮想敵にすることでアメリカ軍が実際の軍事計画と間違わないようにという目的で作られたといいます。
海外で麻薬中毒者が通行人の顔の70パーセントも食いちぎったという事件もあり、犯人は死亡しましたが、実はゾンビだったのではないかとも囁かれ、ゾンビ対策は庶民の中で現実味をおびたものになってきていると考えられます。
このように欧米では、ゾンビ対策は重要だという人が20パーセント以上にものぼり、毎年5月には「ゾンビ警戒月間」として、ゾンビ対策を促進しているようです。
ゾンビの作り方
ゾンビの起源は前項にあるようにブードゥー教の言い伝えです。
ブードゥー教といえば、信者8000万人とも言われている巨大な民間信仰で、針を相手の体の中に埋め込むという呪術で有名です。
呪いの針を埋め込まれたので、手術によって針を取り出すという人が数百人もいたといいます。
民間信仰とよばれるのは、宗教法人として認可されていないからだそうです。
また、それら信者を束ねる組織も存在しません。
したがって民間信仰とされているわけです。
ブードゥー教には呪術者と呼ばれる者たちがおり、呪術者はゾンビパウダーと呼ばれる粉を使ってゾンビを作成します。
前項で話したようにゾンビは仮死状態から作られるので、ゾンビにしたいターゲットを仮死状態にすることからゾンビ作りは始まります。
呪術者が使用するゾンビパウダーとは、死体の骨とボアグラテと呼ばれる豆をすりつぶした粉に、ヒキガエル、トカゲを加えて粉末にしたものにフグやハリセンボンの毒として知られるテトロドトキシンを加えたものです。
テトロドトキシンを加えることからわかる通り、このゾンビパウダーをターゲットに飲ませたり、傷口にぬったりして体内に入れ、毒の効果により、呼吸中枢や心筋を止めることで仮死状態に陥れるのです。
昔のことですから、仮死状態となったターゲットの家族は、本人が死んだと思い込んで埋葬します。
墓の付近に人がいなくなると、呪術者は墓を掘り返してターゲットに解毒剤を与えてよみがえらせます。
よみがえった死体は意識を破壊されており、奴隷のように動くというのです。
なぜなら、よみがえった死体はフグの毒の効果と仮死状態による脳の酸欠状態で脳に重大な損傷を負っているため、自発的意思のない精神障害者となって復活するというわけです。
呪術者は、ゾンビパウダー以外にもチョウセンアサガオやセイヨウハシリドコロから抽出された毒を使って昏睡状態や記憶喪失を誘発させる場合がありますが、毒が過剰であれば死亡し、少なければ頭が正常な状態で復活してしまうので呪術者の能力やターゲットの生命力に左右されるでしょう。
このようにして作られたゾンビは、映画のように人間に危害を加えることもなく、いわば奴隷、労働力として販売されていたといいます。
もちろんゾンビは人間なので疲れますし、映画のように腐敗しません。
元々、犯罪者への刑罰として人間をゾンビ化していたといいますが、犯罪者の精神を破壊して死ぬまで働かせるなんて人道的ではありませんね。
また、家族に死者が出た時、呪術者によって勝手にゾンビにされないように死体が腐り始めるまで見張ったり、死体の首を切り落とすなど損傷を加えて土葬する家族もいたといいます。
ゾンビ事件~死んだ人間が数年後に現れた~
実際にブードゥー教の信仰圏でこのようなゾンビが作られていたのか?と疑問が残りますが、植物学者のウェイド・デイビス博士が自身の著書「蛇と虹」で実際に起こったゾンビ事件を紹介しています。
これによると、1962年5月、ハイチの小さな村エステレに住んでいたクレルヴィル・ナルシスという名の男が41歳の若さで2人の医師から死亡と断定されて埋葬されました。
しかし、18年後の1980年に同じ村でそのクレルヴィル・ナルシスが現れたのです。
なにしろ18年前に死んだ男が、突然現れたのですから当然村人は驚き、大騒ぎとなります。
よく似た別人ということもあるので、本人に話を聞いてみると、生前の思い出を詳しく語るので本人に間違いない。
クレルヴィル・ナルシスに事の真相を詳しく聞いてみると、当時、弟と土地の相続を巡って争っていたと語り、弟とブードゥー教の呪術師の陰謀によって仮死状態にされ、埋葬後にゾンビ化されたというのです。
しかし、彼のゾンビ化は軽いもので最初は自分が何をしているのかわからず、2年間ほどハイチの奥地の農場で奴隷として働かされていましたが、ふと我に気付いて農場から逃げ出しました。
逃げ出したものの行く当てもなく、記憶もありませんでしたが、十数年の後に生まれ故郷であるエステレ村と今までの記憶をすべて思い出したというのです。
しかし、争っていた弟と自分をゾンビ化した呪術師を恐れていたため、すぐにはエステレ村に戻らず、呪術師の死を待っていました。
呪術師の陰謀から18年後の1980年にようやく弟と呪術師の死を知った彼は、故郷エステレ村に帰ってきたという話です。
まとめ
ゾンビとは、モンスターの事とばかり思っていましたが、呪術による脳障害を受けた人間を指すのが起源というのは驚きです。
ブードゥー教による本当の意味でのゾンビより、映画などで登場する腐敗したモンスターとして描かれたゾンビが有名になったことでゾンビ人気となりましたが、本来の意味をしったら脳障害者をゾンビなんていえませんよね。
日本人には程遠く、特定された古い話のため、不適切な言葉があるとは思いますが、決して意図していませんので、ご理解ください。