「アディポネクチン」とは耳慣れない言葉ですが、脂肪細胞から分泌されるホルモンで血液中に豊富に存在しています。
またの名を「超善玉ホルモン」とも言い、健康な体の維持に欠かせない物質です。
このアディポネクチンですが、脂肪細胞から分泌されるホルモンであるにもかかわらず、内臓脂肪が増えると血中濃度は低下します。
また逆に脂肪が少なすぎても血中濃度は低下します。
アディポネクチン血中濃度が低い状態は望ましくなく、2型糖尿病の発症リスクが高くなり、高脂血症(脂質異常症)や心筋梗塞といった病気の発症につながるとも言われています。
ですので、太りすぎも痩せすぎも望ましくない状態ということになります。
一般的には男性のほうが女性に比べてアディポネクチンの血中濃度は低い傾向を示すようです。
いずれにしても、アディポネクチンの血中濃度を高めてゆくことが、生活習慣病の予防につながると言えそうです。
コーヒーは糖尿病や高脂血症、心筋梗塞の予防に効果あり
このアディポネクチンですが、最近の研究ではコーヒー摂取量が増えるとアディポネクチンの血中濃度もそれに伴って増加することが分かっています。
同時に、高感度CRP(全身の炎症の指標)、中性脂肪、肝機能マーカーなどが減少することも分かりました。
つまり、コーヒーを飲むとアディポネクチンが増え、アディポネクチンの作用により中性脂肪と炎症反応が減少し、肝機能マーカーも減少するという連鎖反応が見られたということになります。
この研究結果は、コーヒーが2型糖尿病や高脂血症、心筋梗塞といった病気の予防になることのひとつの説明となるかもしれません。
アディポネクチンの効能について詳しくは「アディポネクチンの効果と増やす方法」を参照してください。
喫煙により減ったアディポネクチンをコーヒーで補う
さて、アディポネクチンを顕著に減少させる生活習慣があります。
それは、喫煙です。
最近の研究によると、たばこを吸うとアディポネクチンの血中濃度が低下し、1日に吸う本数が多いほどその傾向があることが明らかになりました。
前述のように、女性よりも男性の方がもともと血中のアディポネクチンが低いので、喫煙する男性はかなり不利な状況だと言えます。
不思議なことに、たばこを吸う人の多くはコーヒー好きであると言われます。
もしかすると、無意識のうちに体が健康に必要なものを欲しているのかもしれません。
他にも、お酒を飲んだ後にコーヒーを飲みたくなることがありますが、この場合も、コーヒーに含まれるカフェインに肝臓でのアルコール分解促進作用があったり、アルコール分解後の老廃物を排出する助けとなる利尿作用があったりすることから、体が欲しているといえるかもしれません。
したがって、健康のためにはやはりたばこを吸わないのが一番ですね。
ちなみに、禁煙するとアディポネクチンの血中濃度が回復してゆきます。
20年以上禁煙を続けると、初めから吸わない人と同じくらいのアディポネクチン血中濃度まで戻るということです。
たばこを吸われる方はぜひ健康にご注意ください。
健康を維持するためのコーヒーの摂取量
では、どのくらいコーヒーを飲んだらよいのでしょうか。
ある研究では、1日に4杯以上飲む人が一番良い結果が出ていますが、飲めば飲むほど良い結果になるという保証はありません。
コーヒーに含まれるカフェインについても摂取量に上限がありますし、無理して飲んでも逆にそれがストレスになったりしますので、飲みすぎはかえってよくないようです。
コーヒーが健康に良いというデータが出ているとはいえ、1日に3~4杯程度が無難なところかと思われます。
なお、お医者さんからコーヒーを控えるようにと指示されている場合は、お医者さんの指示に従うようにしてください。
飲んでいる薬との相性などもありますのでご留意いただきたいと思います。
焙煎度合いによる成分の違い
ここで、コーヒーに含まれている健康に良いとされる成分の確認をしてみましょう。
まずはカフェインですが、パーキンソン病や2型糖尿病の予防をはじめ、疲労回復効果など多くの効果があります。
カフェインは他の成分との相乗効果(効きを強める効果)もあります。
クロロゲン酸、つまりコーヒーポリフェノールには、強力な抗酸化作用があり、細胞の老化防止や2型糖尿病の予防に有効だとされています。
ナイアシンの一種であるニコチン酸(たばこのニコチンとは全く別物です)には、心筋梗塞や脳梗塞の予防などの効果があるということが報告されています。
これらすべてを摂取できると良いのですが、なかなか難しいようです。
というのは、クロロゲン酸は浅煎りに多く含まれており、深煎りになるほど減少します。
一方、ニコチン酸は深煎りになるほど多く含まれており、浅煎りにはほとんど含まれていません。
カフェインについては焙煎度の違いはそれほど影響しないようです。
それで、どの成分を重視するかで選択する焙煎度が変わってくるということになります。
さらに、成分だけを追求すると美味しくないコーヒーになります。
例えば、焙煎が浅すぎると、コーヒーの香りがほとんどないうえに酸味がかなり強くなってしまいます。
逆に、焙煎が深すぎると、コーヒーはもはや炭と化してしまいコーヒー本来の香りもほのかな酸味も消え、ひたすら苦いだけの飲み物になってしまいます。
これでは嗜好品であるコーヒーを飲む意味がありませんので、ぜひ好みを重視してお楽しみください。
コーヒー豆の焙煎方法について詳しくは「焙煎によるコーヒーの味の違い」を参照してください。
オリジナルブレンドで健康になる
ひとつだけ裏技があります。
それは、浅煎りのコーヒーと深煎りのコーヒーをブレンドすることです。
こうすれば、3つの成分をまんべんなく摂ることができます。
最初は浅煎りと深煎りの比率を半々から始めて、好みで増減してみるとよいかもしれません。
ニコチン酸を重視するなら深煎りを多めに、クロロゲン酸を重視するなら浅煎りを多めにするという方法もあります。
コーヒーは健康飲料~喫煙により減少したアディポネクチンを増やす効果~まとめ
ブレンドは奥が深く、美味しいコーヒーを淹れるには、どの豆をどの焙煎度で使うかを含め、かなりのカットアンドトライが必要になりますが、それもまた楽しみのひとつになるということもあるでしょう。
いずれにしても、心も体もリラックスさせる最高の1杯を楽しむことこそ、何よりの薬といえるかもしれませんね。
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