グルジアという国をご存知だろうか?
グルジアは、旧ソ連から独立前の1990~1995年までは「グルジア共和国」が正式な国名で、コーカサス山脈の南麓、さまざまな民族が行き交うシルクロードの要所でもある南コーカサスに位置し、北側にロシア、南側にトルコ、アルメニア、アゼルバイジャンと隣接する共和制国家です。
グルジアからジョージアへ
旧ソビエト連邦の構成国であったが1991年に独立したことから東ヨーロッパに含められることもありましたが、2008年にロシアと武力衝突したことから、ロシア語に由来する「グルジア」という呼称を「ジョージア」に変更するよう各国に要請していました。
日本では「グルジア」と表記されていましたが、国連加盟国の大多数はもともと英語由来の「ジョージア」と呼んでおり、旧グルジア政府が日本政府に対し、「ジョージア」と表記をかえるように何度も要請してきたが、グルジアのマルグベラシビリ大統領が来日した際に安倍晋三首相に直接働きかけ、2015年4月22日から「ジョージア」へ呼称変更に応じました。
何度も要請され、ようやく変更にいたった理由として外務省に尋ねると「外国の国名や地名を変更するには3つの基準がある」といいます。
① 相手国との関係
② 他の国や都市との混同の恐れがないか
③ 世間に浸透しているか
相手国との関係というのは、グルジア政府がどこまで本気かということで、安倍晋三首相に働きかけたことでやる気を認められたということになりそうです。
他の国や都市との混同についてはアメリカ合衆国にジョージア州がありますが、文脈から判断できるので問題なし。
世間への浸透度については外務省が「今後受け入れられるよう広報に力を入れる」とした。
日本が専制国家ならば、首相の鶴の一声で法律や規則は簡単に変えられるのですが、外国の要請を受けるたびに頻繁に呼称を変えていたら国名の安定性が損なわれるので慎重に判断しているのだそうです。
現地語と違う外国の呼称
グルジアからジョージアになったわけですが、グルジア語では自国のことを「サカルトベロ」と言うそうです。
これは、あえて英語名を名乗ることで国際社会の仲間入りをするつもりだったのか?
定かではありませんが、ここで現地語ではない言語で呼ばれる国の呼称を考察してみましょう。
現地語ではない言語で呼ばれる国の呼称は「エクソニム」とう一種の専門用語ですが、日本で一般的に呼称されているイギリスやオランダ、ポルトガルといった国名は、室町時代から江戸時代に鎖国が行われるまでに日本と交流があったポルトガルでの呼び名であると記されており、イギリスを除く英語圏はほぼ英語読み。それ以外のイタリアやインドネシアは現地語の読みで、ドイツは日本独自の呼称となります。
また、韓国、中国など漢字文化圏の国は漢字の読みがそのまま使われていることが多く、アフリカのカメルーンやコンゴなど、19~20世紀前半の帝国主義時代に列強の勢力下にあった国は、支配下に収めていた国での呼び名が定着していることが多いようだ。
ただし、スペインなど日本とゆかりは深いが英語読みの国もあるので混乱することもあります。
さて、日本語での日本国名は「ニッポン」もしくは「ニホン」だが、こう呼ぶ国は他で見当たりません。
戦前に外国との条約で国名を「ニッポン」とすべきだという議論が巻き起こった時期もあっりましたが、「一国の国号をどうすべきかは結局は便宜の問題であり、『ジャポン』または『ジャパン』という語を国号として条約の原文などに使用しても、なんら国の威信を損ずるものではない」という趣旨の政府見解が作成されたとの記録があるといいます。
まぁ、日本とジョージアとでは侵略や国交の問題があまりに違うということでしょうか。
グルジアワインの歴史
ジョージアの特産物は、グルジアワインです。
これってちょっと面白いのですが、国名はジョージアに変わったものの特産物であるワインは未だにグルジアワインと呼ばれています。
ジョージアは、8000年の歴史を誇る世界最古のワイン生産地の一つとして知られており、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス山脈南麓一帯はぶどう発祥の地と言われています。
ぶどうはコーカサス地方からメソポタミアで栽培されるようになり、全世界へ広がって行き、エジプトにワインがもたらされたのは紀元前3000年以前のことだといわれています。
ユーラシアには私たちの知らない隠れたワイン生産地が数多く存在し、黒海沿岸のモルドヴァとウクライナや意外に知られていないロシア、そして世界的に有名なグルジアとアルメニア。さらには、誰も知らないユーラシアの秘境、中央アジアのウズベキスタンとカザフスタンなど世界的に無名な隠れた銘酒があります。
その中でもグルジアワインは、欧米諸国では多くの根強い愛飲家がおり、その品質の高さは誰もが認めています。
グルジアワインには、赤ワインには珍しい、遅摘みのぶどうから作られる甘口の赤ワインがあり、赤ワインには珍しい遅摘みのぶどうを使用した、後に残らない自然な甘さをもっています。
赤ワイン特有の渋味、タンニン、適度な酸味を残しつつ、さわやかな甘味がこれらの要素と上手く調和し、大変飲みやすワインであるにもかかわらず、その品質の高さにくらべて価格がお手頃で、チリワイン同様、大変コストパフォーマンスに優れているとも言えます。
グルジアワイン
ジョージアでは、大陸性気候のもと多くの品種のぶどうを栽培しています。
土着のサペラヴィ種からは赤ワイン。
また、ムツヴァネ種からは辛口の白ワインが生まれます。
グルジアワインは、遅摘みのぶどうから作られるやや甘口の赤ワインでグルジアを代表するフヴァンチカラ、キンズマラウリ、アハシェニなどが多くの愛好家に好まれていますが、オーク材の樽の香りに渋味や酸味が程よくのった本格的な辛口赤ワインのムクザニやサペラヴィ、まろやかできめの細かい味わいの辛口白ワインのツィナンダリ、グルジャアニ、ヴァズィスバニなど数えればきりがなく、最近のバランシンやピロスマニなど新しいグルジアのワインも生まれているほどです。
甘口赤ワイン
遅摘みのぶどうから作られる、ちょっと贅沢な甘口赤ワイン。甘口の有名な銘柄はグルジアでも大変高価なもので、年間に作られる量も限られています。一部銘柄は未だ手に入らないこともあり、今後グルジアワインファンが着実に増えていくと考えられます。
辛口赤ワイン
価格に比して内容がワンランク上にあるのがグルジアワインの特徴の一つですが、同価格帯の他のワインと飲み比べてみると、グルジアの辛口赤ワインは自分達の伝統の味を守り続けてきので、グルジア独特のこだわりを感じ取ることができます。
辛口白ワイン
和食、洋食、中華と何にでもよく合う万能なグルジアの辛口白ワイン。くせのないすっきりとした飲みやすさが特徴です。グルジアを代表する辛口白ワイン「ツィナンダリ」は世界的に有名なグルジアの自信作であり、ワイン醸造者達の誇りです。いろいろな白ワインを飲み比べて、ぜひ自分のワインを見つけてください。
さぁ、国名はグルジアからジョージアへ呼称が変わりましたが、今もグルジアワインの名で親しまれている「ぶどう発祥の地」の本場のワインをみなさんも堪能してみてはいかがでしょうか。