一般的に、あくびは眠気や退屈を表わすサインととらえられています。
そのため、人前であくびをするのは失礼にあたると考える人も多くいるのではないでしょうか。
しかし最近のある研究によると、あくびをすることが健康にとって重要かもしれないということがわかってきました。
生あくびの原因は偏頭痛であるとも言われていますが、実はあくびには思わぬ効果があるのです。
この研究を行なったのは、米プリンストン大学のアンドリュー・ギャラップ博士(Dr. Andrew Gallup)とそのチームです。
あくびで脳の温度が下がる
ある実験にはラットが用いられました。
ラットの脳に測定機器を埋め込み、脳の温度とあくびの関係を調べたのです。
その結果、たった0.1℃体温が上昇しただけであくびが誘発されることがわかりました。
あくびの原因のひとつが体温の上昇だったのです。
そして興味深いことに、あくびをすると脳の温度が最大で0.4℃も低下することも明らかになりました。
つまり、あくびには脳を冷やす効果があるらしいことがわかってきたのです。
あくびは脳を活性化する
ギャラップ博士によると、あくびは脳を約37℃に保つのに役立っている可能性があるとのことです。
これはとても重要なことです。
脳を適温にしておかなければ、反応時間の遅れや記憶能力の低下などのいろいろな弊害の原因になってしまうためです。
あくびをすると、普通は口を大きく開けることになります。
この動作によって脳への血液の流入が増加し、温度の上がった血液が効率的に脳から排出されると考えられています。
さらに、あくびをすると、息を大きく吸うことになりますが、このことにより鼻と口にはたくさんの空気が流れ込んで放熱され、結果として脳の温度が下がるのです。
冬にあくびをすると効率がよい
別の時にギャラップ博士は、無作為の通行人に対してあくびしている人のイメージを見せ、あくびをするかどうか季節を変えて調査しました。
結果は、夏には25%、冬には50%があくびをするというものでした。
この実験結果は一見仮説に反するように思えますが、脳を冷やすには冷たい空気と温まった脳とが熱交換をする必要があるので、気温の高い夏にあくびをしても効率が悪いためだと考えられています。
もっとも、通常は暖かい部屋にいる時の方があくびをしやすいものです。
そして室温が高いと放熱の効率が悪いためにあくびの効果が薄く、あくびを連発してしまう原因になっているようです。
気温が高いときに混乱したり意識がもうろうとしたりするのは、脳が冷やせないからだと言われていることを考えると、実はあくびには重要な役割があるということになります。
あくびでストレスを解消する
興味深いデータがもうひとつあります。
脳の温度を上げるのは気温だけではありません。
ストレスや不安を感じる時にも脳の温度は上がるのです。
脳を適温にしておくことでその状況に対しより柔軟に対応できるということを考えると、ここでもあくびの重要性が浮き彫りになってきます。
あくびは、脳にとって不都合な温度上昇に対処するためのものなのです。
病気の原因解明に役立つあくび
研究者たちはこのようなあくびに関するデータが、運動ニューロン疾患やてんかんなどの病気を理解するのに役立つと考えているようです。
これらの病気の主な症状のひとつはあくびだからです。
あくびの原因と意外な効果|涙を伴う生あくびで健康になる!? まとめ
あくびは眠気や退屈を表わすサインと思われがちですが、実際には脳の過熱を防いで自分の体を守るためのメカニズムだったのです。
→記憶に影響を及ぼす受動喫煙!脳の働きは回復できる!家族を守れ