サイフォンはコーヒー通の間でも根強い人気を誇る淹れ方です。
まるで化学の実験をしているかのような気分になるその形状は、コーヒーの抽出過程を目で見て待つことができるようになっており、楽しいひと時をもたらしてくれます。
サイフォンはダブル・グラス・バルーンと呼ばれる抽出器をあるイギリス人が開発したことがその始まりとされ、その原理は水蒸気の圧力を利用して下の耐熱ガラスのフラスコで沸かされたお湯をロートに押し上げてコーヒーを抽出する仕組みになっています。
味にも特色があり、のど越しや香りがよい日本人好みの柔らかいコーヒーを淹れることができます。
コーヒー豆の挽き具合と量、それに火力と抽出の時間をきちんと決めておけば、毎回同じ品質コーヒーを淹れることができるのもサイフォンの大きな魅力です。
ロートやフラスコはガラスでできているため、取り扱いには注意が必要です。
では、サイフォンで美味しいコーヒーを楽しむために必要ないくつかのポイントを見ていきましょう。
サイフォン抽出の道具選び
サイフォンは演出効果抜群の洗練された器具で、価格も他の抽出器具と比較して高価です。
たいていの場合は、ロートとフラスコ、加熱用のアルコールランプ、ネル、濾過機などすべてがセットになって販売されています。
プロはガスでお湯を沸かしますが、家庭ではアルコールランプを使います。
最近ではビームヒーターという調節がしやすく便利な熱源もあります。
アルコールランプを使用する際に、最も気を使うのが火加減です。
アルコールランプの購入後は芯を短く調整し、先端を丸くハサミでカットして炎をほどよい大きさにするのがコツです。
こうすれば、初心者にありがちな失敗の原因となる強すぎる火力を避けることができます。
ネルフィルターは、雑味のないクリアなコーヒーの抽出のために欠かせない大事な器具です。
ネルは片面が起毛しているタイプのものがおすすめです。
ネルへのフィルターのセットは、起毛していない面を表にしてネルの中心に置き、中心を押さえながら紐をゆるみがないようにしっかり締めていき、最後に紐を切って完成です。
コーヒーを抽出する他の道具より少し価格は高くなりますが、最近ではハリオなどのコーヒーサイフォンが人気です。
サイフォンでの美味しい淹れ方
挽き方は中挽きがおすすめです。
豆は直前に挽くのが美味しく淹れるポイントです。
1人前では17g程度を上部のロートに入れますが、お好みや焙煎の度合いで量を加減してもよいでしょう。
一度に何杯分か淹れる場合は、粉の量を単純に倍増していくと濃くなりすぎるので、1杯あたりの粉の量はいくらか減らします。
器具をセットする
金属製の濾過器に、専用のネルフィルターをセットします。
新品のネルフィルターは使う前に軽く水洗いし、濾過器にセットした状態のままコーヒーで20分ほど煮沸します。
こうすることで糊や汚れなどが取り除かれるだけでなく、コーヒーともなじみやすくなります。
挽いたコーヒー粉は上部のロートに入れます。
お湯を加熱する
フラスコに必要な杯数分のお湯を入れ、乾いた布巾で外側についた水滴をよく拭いてからロートをフラスコにしっかりと固定し、アルコールランプにかけて沸かします。
出来上がりを1杯150ccとすると170ccのお水が必要です。
火力の弱いアルコールランプでは、お湯が沸騰するのに時間がかかり、その後の火加減も難しくなってしいますので、ポットをガスコンロなどにかけてあらかじめ沸かしておいたお湯を使うとよいでしょう。
ここで最も難しいのが火加減で、沸騰してロートにお湯が上がったときに、お湯が下に落ちないギリギリのところまで火を弱くするのがコツです。
何回かトライして最適な火加減を覚えましょう。
目安は、フラスコの下部に炎の頂点が触れる程度の中火です。
香りがよく雑味のないコーヒーを淹れるため、ぐつぐつ沸騰させないようにしましょう。
あとはお湯が上がるのを待ちます。
1回目の撹拌をする
湯が上がりきったら弱火にして1回目の攪拌を行ないます。
静かに、ゆっくりと竹ベラを使って円を描くようにかき混ぜます。
混ぜすぎは抽出しすぎになり雑味の原因にもなるため、数回だけにとどめます。
攪拌したら、しばらく静かに待ちます。
待ち時間の目安は1杯分なら1分ほどですが、2杯分、3杯分と増えるごとに5秒ずつ差し引きます。
2回目の撹拌をする
待ち時間が過ぎたら、火を消して2回目の攪拌を行ないます。
この時も、静かに、ゆっくりと竹ベラを使って円を描くように数回かき混ぜます。
撹拌後にロートの内側が上から泡、コーヒーの粉、液体の3層になっているのがベストの状態です。
コーヒーが落ちるのを見る
コーヒーが落ちるのを静かに待ちます。
ロートからはじめはゆっくりと、最後は勢いよくコーヒーが落ちていきます。
すべてフラスコに落ちきるまでじっと待ちます。
コーヒーがすべて抽出された後、ロートに残った粉がドーム状に盛り上がり、その表面に雑味の原因となる細かな泡が乗っていて、下にいくほど粗い粉の層ができているのが、クリアな味わいのコーヒーが抽出されているサインです。
すべてが落ち切ったら、ロートを外して、柄の部分を持ってカップに注いで完成です。
使用後のお手入れ
フィルターに使用しているネルは乾燥させないことが重要なポイントです。
乾燥するとネルに残っているコーヒーの油分が空気中の酸素に触れて酸化してしまい、風味がはなはだしく損なわれますので、適切な方法でお手入れをして保管しなければなりません。
使用後のフィルターは濾過器に付けたまま水でよく洗い、付着したコーヒーの粉を完全に取り除いてから、お水を張った容器の中に入れ、冷蔵庫で保管するようにします。
ネルが空気に触れないよう、完全に水に浸しておくようにしましょう。
水は毎日取り換える必要があります。
数日使わない場合は、一度沸騰してから使用するようにします。
コーヒーを淹れてみて、落ちが悪くなったらフィルターの交換時期です。
まとめ
サイフォンはコーヒーができあがるまでの過程が目で楽しめる演出効果抜群の淹れ方で、来客時には絶大な威力を発揮します。
確かに、うまく淹れるためにはいくらかコツが必要ですし、器具の数も多くお手入れにもいくらか手間がかかります。
それでも、演出される独特な空間とあいまって、抽出される柔らかな味わいのコーヒーはまさに嗜好品の王様といっても過言ではないでしょう。